企画展「横尾龍彦 瞑想の彼方」が、埼玉県立近代美術館にて、2023年7月15日(土)から9月24日(日)まで開催される。神奈川県立近代美術館 葉山などでも開催された巡回展だ。
横尾龍彦(よこお たつひこ)は、日本とドイツを往来しつつ活動した画家だ。1928年に生まれた横尾は、60年代後半、神話やキリスト教を題材に幻想画を手がけ、澁澤龍彦や種村季弘らに高く評価された。80年代以降には、禅やルドルフ・シュタイナーの思想の影響のもと、瞑想によって湧きあがるイメージを、抽象的に表現する作風を確立。晩年は、埼玉県内のアトリエを拠点に活動している。
企画展「横尾龍彦 瞑想の彼方」は、北九州市立美術館、神奈川県立近代美術館と共同で開催される、日本の美術館では初となる横尾の回顧展。埼玉のアトリエに遺された作品約90点を中心に、初期から晩年に至る作品や資料を紹介し、活動の全貌をたどってゆく。
1950年に東京美術学校日本画科を卒業した横尾は、北九州市で美術教師を務めつつ制作活動を開始。65年に渡欧し、西洋美術の見識を深めると、シュルレアリスムを通じて無意識の世界を表現することを試みるようになった。さらに73年には、異国風の人物や神話的な動物の姿を緻密に描いた画集『幻の宮』を刊行し、国内各地でファンを獲得している。会場の序盤では、60年代の版画や油彩画に加えて、『幻の宮』の掲載作品などを展示する。
暗く妖艶な雰囲気を湛えた作品を制作する一方、1970年代後半より横尾は、明るい青を基調に広がりのある空間構成で描かれた、抽象性の強い作風も展開している。横尾は、地塗りの絵具を手で直接かき回して画面を抽象化し、聖書の「黙示録」や広大な風景をテーマに作品を手がけた。ここでは《朝焼け》をはじめ、横尾自らが「青の時代」と呼ぶ70〜80年代の作品を目にすることができる。
1970年代後半、西洋絵画に強く影響された自身の作風に行き詰まりを感じた横尾は、78年にルドルフ・シュタイナー研究会に加わるなど、東西の思想や宗教を貪欲に吸収した。80年、ドイツに移住すると、西洋の人びととは異なる日本人としての精神を自覚し、次第に日本回帰を志向。書を彷彿とさせる抽象画や、禅に由来する画題の作品を手がけるようになる。会場で展示される《枯木龍吟2》などは、こうした作品の例である。
横尾はやがて、東洋の精神性を背景としつつも、東西いずれの精神にも拠らない表現を模索し、1990年代末に独自の画風に至ることになる。これは、制作前に瞑想して自意識を滅却することで、無作為に描くスタイルであり、特定の画法や知識を必要としないものであった。本展の終盤では、《アポカリプス》や《青い風》など、2000年代から晩年に至る作品を展示。また、2000年代に日本とドイツで行なわれた、制作の様子をパフォーマンスとして披露した様子も紹介する。
企画展「横尾龍彦 瞑想の彼方」
会期:2023年7月15日(土)〜9月24日(日)
会場:埼玉県立近代美術館
住所:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
開館時間:10:00〜17:30(展示室への入場は17:00まで)
観覧料:一般 1,000円(800円)、高校・大学生 800円(640円)
※( )内は20名以上の団体料金
※中学生以下、障害者手帳の提示者(付添者1名含む)は無料
※本展の観覧券で、あわせてMOMASコレクション(1階展示室)も観覧可
【問い合わせ先】
埼玉県立近代美術館
TEL:048-824-0111