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眼鏡の聖地 鯖江のモノづくり、3D造形眼鏡を生み出す「FACTORY900」デザインに秘めた想いとは

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眼鏡の聖地 鯖江のモノづくり、3D造形眼鏡を生み出す「FACTORY900」デザインに秘めた想いとは | 写真

福井県 鯖江産地の眼鏡ブランド「FACTORY900(ファクトリー900)」、眼鏡好きならば名前を聞いたことがあるかもしれない。一度見たら忘れられない、その造形的で近未来的なデザインが最大の特徴だ。

世界を代表する眼鏡の産地である鯖江はモノづくりが盛んで、日本一のシェアを誇る眼鏡のほか、越前漆器や繊維など日本有数の技術を誇る産業都市。特に眼鏡に関しては、国内生産の9割以上を生産し、世界的に見てもイタリア・中国とともに世界三大産地の一つに数えられている。

そんな鯖江産地で、長年プラスチックフレームの設計・製造を手がけてきた工場「青山眼鏡」。その自社ブランドが「FACTORY900」だ。ブランド名は、眼鏡工業組合員番号の900番に由来し、“工場番号900番”を意味する。「THE FUTURES EYEWEAR」をコンセプトに、未来を想わせるアイウェアを生み出している。

眼鏡の聖地 鯖江のモノづくり、3D造形眼鏡を生み出す「FACTORY900」デザインに秘めた想いとは | 写真

福井県に訪問し、「FACTORY900」デザイナーの青山嘉道のモノづくりに迫った。彼は、青山眼鏡の技術力をベースに、アイウェアに”造形的なデザイン”を吹きこんでいる。

「FACTORY900」の母体となる青山眼鏡とはどんな会社でしょうか。

青山眼鏡は、鯖江で80年以上に渡りプラスチックフレームを専門にアイウェアの設計・製造を手がけている会社です。元々は(ブランドから製造を受託する)OEMがメインでした。現在は父が会長を、兄が三代目として社長を、私がFACTORY900のデザイナーを務めています。父と兄が培った技術力が青山眼鏡及びFACTORY900の最大の強みです。

プラスチックフレームの眼鏡の製造工程について解説をお願いします。

眼鏡の製造工程は、
1. アセテート板の裁断&プレス機による曲げ加工
2. 特殊加工機による切削・成形
3. 機械研磨・職人による組み立て
4. 職人による最終研磨・仕上げ
と大きく4つの工程に分けられます。材料はシンプルな板ですが、技術力や職人の手によってフレームの形は大きく変わります。

STEP.1 アセテート板の裁断&プレス機による曲げ加工

眼鏡の聖地 鯖江のモノづくり、3D造形眼鏡を生み出す「FACTORY900」デザインに秘めた想いとは | 写真

眼鏡のプラスチックフレームは、棉花やパルプという植物繊維を原料にしたアセテート板を材料に作られます。工場には様々な色合いや模様の板が用意されており、その柄が完成フレームの模様の元となります。

まずは、パネルソーと呼ばれる高精度な切断加工機で、大きな板状のシート材を眼鏡のサイズに合わせて切り出します。切り出された板は、その後プレス機により、眼鏡への形へと曲げ加工が行われます。

STEP.2 特殊加工機による切削・成形

その後、複雑なデザインのフレーム加工が可能な“5軸加工機”により、立体的な「FACTORY900」の眼鏡へと切削・成形されていきます。企業の生命線なので詳しいことはお話しできませんが、この段階で1つの板がほぼ眼鏡フレームの形になります。父や兄の優れた技術力が現れています。

STEP.3 機械研磨・職人による組み立て

眼鏡の聖地 鯖江のモノづくり、3D造形眼鏡を生み出す「FACTORY900」デザインに秘めた想いとは | 写真

次に、フレームをチップや研磨剤を入れた樽の中で回す「バレル研磨」を行ない、摩擦によって傷や汚れの除去・艶出しを行います。そして、磨き上げられたフレームに職人が手作業でバネ蝶番やパッドなど、部品を一つずつ丹念に取り付けていきます。

STEP.4 職人による最終研磨・仕上げ

眼鏡の聖地 鯖江のモノづくり、3D造形眼鏡を生み出す「FACTORY900」デザインに秘めた想いとは | 写真

その後、高速回転する布製の円盤に部品を押し当てる事により、手作業で研磨をする「バフ研磨」も行います。この工程で、バレル研磨では取れない打痕や細かい傷を一つ一つ点検を繰り返しながら磨き上げ、さらに艶と深みのある輝きを出します。

眼鏡の聖地 鯖江のモノづくり、3D造形眼鏡を生み出す「FACTORY900」デザインに秘めた想いとは | 写真

最後に、レンズはめ・先セル刻印・モダン曲げなどのプロセスがあり、磨き終わった部品を傷つけずに全ての製品を均一に仕上げます。そして最後に厳しい検品を経て、一つの眼鏡が生まれます。

鯖江で活動する恩恵は感じますか?

鯖江という地域に根付いて、活動している以上、恩恵は感じます。Made in Japan、Made in 鯖江の信頼やブランドは、先人の職人の努力で築き上げられたものです。彼らが築き上げた“眼鏡の産地ブランド”にぶら下がったり、蓄積されたものを消費していては先がない。世界的に見れば鯖江の地位が安泰なわけではありません。特に中国の眼鏡産業は大きく成長しました。前ほどではないですが、イタリアもまだ強い。このままだとどんどん置いていかれてしまう。

だからこそ私たちの仕事が、顧客への信頼をさらに強くし、次の世代に技術を継承できるようにしていかねばと思います。もちろん工場としての役割も重要ですが、もう1つの価値が必要です。それが、鯖江のメーカーや職人達がみずからデザインを発信していくということだと信じています。そうしないと、いつか世界が鯖江を産地として選んでくれなくなってしまうと思うのです。

今、鯖江のメーカーや職人達が様々な形でものづくりを発信しています。みんなが同じ方向を向く必要はなく、個々人が信じる形で勝負をしていくことが大事ですね。FACTORY900も自分たちが信じる道を進んでいます。

小さい頃から家業を手伝うつもりでしたか?

いいえ。子供の頃から、良い時もあれば悪い時もあるOEMの世界を目の当たりにし、眼鏡屋にはなりたくないと思っていました。実際、以前は地元の漆器会社に勤めていました。早く帰れる環境だったので、帰宅後、父親や兄の一生懸命働く姿を間近で見ていました。彼らの熱意に触れ、少しずつ仕事を手伝うようになったのがきっかけとなり、最終的に入社しました。

眼鏡デザイナーになった経緯を教えてください。

青山眼鏡に入社するにあたり、自分の武器とは何か?と問うたのがスタートでした。父は鯖江でも「お前の親父の技術はピカイチだ。」と周りの方々が私によく言ってくれる有名な技術者。兄は父と2人3脚で技術を高めていました。自分の居場所を探す中で、SSID(鯖江市立インテリジェントデザイン講座)を受けました。元々子供の時から絵は大好きで、高校時代に美術大学を目指していた時期もあったので、最初の授業で久しぶりに鉛筆を持って書いていると、高校時代に得た昔のスキルを思い出しました。技術・テクニックを使って描ける自分がすごく気持ちよくて、そのままのめりこんでいきました。

こうしてデザイナーとして家業に参加した青山は、自社ブランドである「FACTORY900」の舵を取ることになる。

眼鏡の聖地 鯖江のモノづくり、3D造形眼鏡を生み出す「FACTORY900」デザインに秘めた想いとは | 写真

「FACTORY900」に携わった時の気持ちとは…

他社に技術を提供するのも大切な仕事ですが、次の時代は自社のために技術を使っていくことがより重要になると思っていました。多くのOEM会社にとって、ファクトリーブランドは仕事を受注することを目的に、自社技術やアイデアを示すためにありました。けれど私は、青山眼鏡が持つプラスチックの造形技術を武器にし、技術でなく、出来上がった”製品そのものに魅力があるブランド”として成り立つようにしたいと思いました。

ブランド設立当初に直面した困難はありましたか?

実際全く売れなかったことですね(笑)。当初は、革新的なデザインの眼鏡を作ったら買って頂けるもの、と安易に考えていました。けれど、展示会で出会う多くのバイヤーさんが見ているものは、眼鏡そのものではなく、それが実際に顧客の支持を得られるブランドなのか、実績がある会社なのかといった背景だと感じました。FACTORY900は誕生して間もないブランドだったので、当時は実績やブランド力はなく、眼鏡のデザインに驚いてもらっても取引先を作るのに苦労しましたね。

ブレイクしたきっかけは何でしたか?

展示会に参加した帰りに、自分たちで調べて直接ショップへ営業しに行ったことです。そうした活動を通じて、ジュジュビー(JUJUBEE)、カムロ(KAMURO)、オプティシァン ロイド(Opticien Loyd)などのセレクトショップから興味を持って頂いたのです。気付いたことは、自分たちを理解してくれるショップは、自分たちで探さないといけないということ。2001年にFACTORY900に携わりはじめ、少しずつ取り先が増え、デザインの尖り具合と、人が求めているバランスが分かってきた2004年あたりから爆発的に売れ始めました。

「眼鏡」という概念を壊し続けていくブランド

改めて「FACTORY900」はどのようなブランドでしょうか?

「FACTORY900」は「眼鏡」という概念を壊し続けていくブランド。他と似たような方向を後追いしていくようだったら、それは“ブランド”じゃない。私たちは「美」の追求をベースに、“3次元造形”というのがやはり1番の特徴だと思っています。

「FACTORY900」には3つのラインがありますよね。

眼鏡の聖地 鯖江のモノづくり、3D造形眼鏡を生み出す「FACTORY900」デザインに秘めた想いとは | 写真
大文字ライン FA-241

そうですね、「FACTORY900」には3つのラインがあります。「大文字ライン」はソリッド感があり、塊から削り出しているようなイメージです。

眼鏡の聖地 鯖江のモノづくり、3D造形眼鏡を生み出す「FACTORY900」デザインに秘めた想いとは | 写真
マスクシリーズ FA-085

さらに「大文字ライン」には、2年に1回のペースで発表している「マスクシリーズ」があります。これはトレンド・かけやすさ・視力矯正用具など様々な要素を剥ぎ取り、「眼鏡」「FUTURE」というコンセプトだけを残して作っています。

眼鏡の聖地 鯖江のモノづくり、3D造形眼鏡を生み出す「FACTORY900」デザインに秘めた想いとは | 写真
小文字ライン fa-1129

「小文字ライン」はまだ実験的な段階ではありますが、プロダクトとしてのデザインをしっかりと取り入れていくライン。

眼鏡の聖地 鯖江のモノづくり、3D造形眼鏡を生み出す「FACTORY900」デザインに秘めた想いとは | 写真
レトロライン RF-015

そして「レトロライン」はファッションという切り口で作っています。

次のページ:FACTORY900のデザイン

Photos(24枚)

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