トヨタ(TOYOTA)は、静岡県裾野市に「ウーブン・シティ(Woven City)」と呼ばれる、実験都市を開発するプロジェクトをスタート。
2020年1月7日(火)、アメリカ・ラスベガスの世界最大規模のエレクトロニクス見本市「CES 2020」において発表された、トヨタによる「ウーブン・シティ」。目的は、ロボット・AI・自動運転・MaaS・パーソナルモビリティ・スマートホームといった先端技術を人々のリアルな生活環境の中に導入・検証する実験都市を新たに作り上げることだ。
パートナー企業や研究者と連携しながら、技術やサービスの開発・実証のサイクルを素早く繰り返し、人々の暮らしを支えるあらゆるモノやサービスが情報で繋がることで生まれる、新たな価値やビジネスモデルを見出す。
建設場所は、2020年末に閉鎖されたトヨタ自動車東日本株式会社 東富士工場(静岡県裾野市)の跡地。東京ドーム約15個分に値する175エーカー(約70.8万m2)の範囲で街づくりを進めていく。
2021年2月より着工し、プロジェクト初期はトヨタの従業員や関係者をはじめとする2,000名程度の住民の入居を想定。将来的には、一般入居者の募集や、観光施設としての運営も期待されるところだ。
プロジェクトの核となる実験都市「ウーブン・シティ」は、日本語に直訳すると「編まれた街」の意。これは、街を通る道が網の目のように織り込まれたデザインに由来する。
その道とは具体的に以下、3種類に分類される。
1:スピードが速い車両専用の道として、「e-Palette」など、完全自動運転かつゼロエミッションのモビリティのみが走行する道
2:歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが共存するプロムナードのような道
3:歩行者専用の公園内歩道のような道
これらが、まるで血管のように、それぞれが街の交通や物流において重要な役割を担う。なお、人々の暮らしを支える燃料電池発電も含めて、この街のインフラはすべて地下に設置される。
なお、トヨタ社長 豊⽥章男は、2021年10月6日(水)のトヨタイムズ放送部にて「裾野市全体がウーブン・シティになるわけではない」と前置きし、「自動運転車の目的は安全。ウーブン・シティはクルマの安全とともに、道、人を加えた三位一体で安全を確保するためのテストコース。ヒト中心の街をつくらない限り、安全な自動運転はできないと思い、ウーブン・シティをつくろうと決断した」と、“街”という形のテストコースの必要性を強調した。
「ウーブン・シティ」が目指すのは、ヒトやモノ、情報がより活発に動くことのできる「モビリティの拡張」と「未来の当たり前を発明」するための仕組みづくり。「ウーブン・シティ」においては、働く人、住む人、訪れる人各々が“発明者”として、生活する中で感じた困りごとやアイディアを共有。“街”というリアルな生活の場を通して、浮かび上がったアイディアを実現させるまでの方法や効果を暮らしの中でテストしていく。
また、発明とテストの過程で困難が生じたときには、発明を加速させるためのサポートも実施。リアル・デジタルの両側面でものづくりのサポートをしたり、事業立ち上げ・拡大を支援したりと、アイディアをすばやく実現へと発展させるための試みを行う。
都市設計を担当するのは、世界最高の若手建築家として知られる、デンマーク出身の建築家ビャルケ・インゲルス。CEOとして建築事務所「ビャルケ・インゲルス・グループ(BIG)」を率いる同氏は、これまでにニューヨークの新たな第2ワールドトレードセンターやグーグルの新本社屋、レゴ本社に建てられたレゴハウスなど、革新的でユニークなプロジェクトの数々を手がけている建築界の新星だ。