詩人・最果タヒの個展「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」が、2020年8月1日(土)から9月13日(日)まで、福岡市の三菱地所アルティアムにて開催される。
※京都文化博物館 別館ホールにて開催される予定だったが中止となった。(2020/6/16更新)
中学生の頃よりインターネット上で“言葉”の発表をスタートし、2006年に投稿作品が第44回「現代詩手帖賞」を受賞。翌年には第一詩集を刊行し、第13回「中原中也賞」に選ばれるなど、詩人として高い評価を得ている最果タヒ。さらにはSNSの活用、作詞、詩集の映画化、商業施設とのコラボレーション、空間を使った前衛的な作品発表など、その多岐に渡る表現活動でより一層の注目を集めている現代の詩人だ。
そんな最果タヒにとって関西初の個展となる本展では、2019年2月に横浜美術館で開催された「氷になる直前の、氷点下の水は、蝶になる直前の、さなぎの中は、詩になる直前の、横浜美術館は。―― 最果タヒ 詩の展示」で発表したインスタレーションと新作の展示を、重要文化財である京都文化博物館 別館ホールを舞台に行う。
読者が会場を歩き回り、空間全体で言葉を体感するインスタレーションの中でも特に重要な位置付けの作品となるのが、天井から多数の言葉が書かれたモビールを吊るす「詩になる直前の、京都文化博物館は。」。表裏に異なる詩の断片が記されたモノトーンの紙片が、静かに揺れ動きながらいくつもの言葉の連なりを生み出し、読者自身がその偶然の中から詩を切り取っていくという、新たな言葉の体験が堪能出来る作品だ。
会場には、このほかにも書き下ろしの作品を含む自らの詩を大胆に断片化し、空間いっぱいに展開。「作品は誰かに読まれることで、初めて意味を持つものであってほしい。」そう願う最果タヒによる「詩になる直前」の言葉たちを追いかける体験を通して、“言葉”との新たな出会いを楽しんでみてはいかがだろう。
言葉は、常に運動をしている。何億人もの人がその言葉を用い、それでいて、それぞれが少しずつ違った意味や印象を、言葉の向こうに見出している。だからこそ言葉は、刻々と変化し、運動を続けている。
わたし一人が、言葉を一方的に、道具として用いることなどできず、常に、言葉が抱える無数の意味や価値の渦に巻き込まれていく。そのコントロールのできなさ、言葉に振り回される瞬間に、わたしは「言葉に書かされている」と感じます。それは時に、わたしよりも深く「わたし」を捉える言葉となる、わたしを飛び越えた、別の何かへと変貌する言葉となる、それこそが、わたしにとっての「書く喜び」です。言葉がわたしの代弁者として、世界へ出ることなどありません。わたしはいつも置き去りにされ、それこそが痛快であるのです。
知らない自分に、言葉で会うこと。それは、自分の底さえ突き破り、その向こうの、自分ですらないものへと、繋がることだ。だからこそ言葉は、書かれ、他の誰かに読まれることをじっとじっと待っている。
詩の展示。
言葉が、わたしを飛び越える。それは、「読む」瞬間もきっと同じです。読むことは、与えられた言葉を受動的に読むのではなく、その言葉を自分だけの言葉へと変容させていく行為だと思う。そのとき、言葉の変化は、読むその人の予想を、そしてその人自身を、時に追い越していくだろう。それは「書かれた言葉」のスピードであると、読み手は思うのかもしれない。けれど、あなたも加速している、あなたの言葉が、加速している。そのスピードを、肌で、気配で、空間として、感じられる場所を、私は「詩の展示」と呼んでいます。
われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。あなたしか立つことのできない確かな星から、どうか、言葉を見に来てください。
「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」
日程:2020年8月1日(土)〜9月13日(日)
会場:三菱地所アルティアム(福岡市中央区天神 1-7-11 イムズ 8F)
※会期中休館日なし
※2020年6月17日(水)〜7月5日(日)で開催予定だった京都への巡回は中止。
【問い合わせ先】
キョードーインフォメーション
TEL:0570-200-888(10:00〜18:00)