オープン記念 常設展「エリック・カール 遊ぶための本」が、2020年6月10日(水)、東京・立川にオープンする美術館「プレイ ミュージアム(PLAY! MUSEUM)」にて開催される。会期は2021年3月28日(日)まで。
“絵本の魔術師”と呼ばれ、日本でも人気を集める絵本作家、エリック・カール。絵本『1、2、3 どうぶえんへ』を発表して以来、『はらぺこあおむし』『パパ、お月さまとって!』といった絵本を手がけ、世界中で親しまれてきた。
エリック・カールの絵本の特徴は、随所に隠されたユニークな仕かけ。例えば『巨人(ジャイアント)に気をつけろ!』では、ページに描かれた本や壺の蓋がめくれるように仕上げられ、開くと別の絵が現れるというように、まるで“おもちゃ”のように作られている。
「エリック・カール 遊ぶための本」では、絵本を“おもちゃ”に見立てるという新しい視点から、エリック・カールの世界を紹介。「くぐる」「きく」といった10の遊び方に分けて、カールが描いた絵本原画を展示する。
「くぐる」では、ベストセラー「はらぺこあおむし」シリーズを、鮮やかなイラストレーションとともに紹介。この作品では、あおむしが果実をかじる場面のページに本物の穴がくり抜かれており、穴ぼこを触って物語を経験できるだけでなく、あおむしとともに時間をくぐり抜け、生き物の変身を目の当たりにすることができるのだ。
一方「きく」では、生まれたばかりの“コオロギぼうや”が歌えるようになるまでの物語『だんまりこおろぎ』をピックアップ。最後の場面には、コオロギの“歌”が聴こえるような仕かけが隠れている。また、昼の空が真っ白であるのに対し、濃い青や藍色による夜空の表現も目を惹く。
また「かぞえる」では、デビュー作『1、2、3 どうぶえんへ』を紹介。汽車に乗った動物たちが、ページをめくるごとに増える同作では、数や生き物といった要素に楽しみつつ親しむことができる。コラージュで作られた象などの生き物は、絵具の濃淡やドリッピングもリズミカルで、目にも楽しげだ。
さらに、「かく」では、青い馬や緑のライオンを暖色のグラデーションを背景に描いた『絵をかくかくかく』を紹介。ドイツの画家フランツ・マルクの《青い鳥》を見た思い出を元にした同作は、「絵のなかならば青い馬や赤いワニがいてもいいじゃない」という発想から描かれており、カールの自由な想像力が発揮されている作品だといえよう。
ほかにも、スモック、使用した筆や絵具といった画材、コラージュに使った紙など、エリック・カールの制作にまつわる品々も。絵具の色や形からは、それだけからでもカールの世界観が立ち現れてきそうだ。
本展はそのように、絵本という完成された作品だけでなく、そこに至る創作の基盤や過程へと目を向けさせることで、エリック・カールの創作世界の深みへと誘ってくれる展覧会となっている。