女優・土屋太鳳 - NHKの連続テレビ小説『まれ』でヒロインを務め、以降『オレンジ-orange-』『青空エール』など、青春作品の出演が続き、爽やかな少女役が板についてきた。UNDER30歳の若き女優でありながらも、2021年で芸歴は13年。
過去のインタビューでは、「“仕事で悩んだことは、仕事でしか解決できない”と感じているのです。それをいかにエネルギーに変えられるかが大事。」と話すほど、俳優業に対してはストイック。『哀愁しんでれら』ではダークな役柄に、『るろうに剣心』ではアクションにチャレンジするなど、近年、その活躍の場を広げている土屋太鳳がいま考えていることとは?
Q.演じるとき、いつもどんなことを考えていますか。
一番は、演じるキャラクターの“どの気持ち”を大切にするか。青春ものに出てくるような明るいキャラクターであっても、(人間なので)心の中にはきっと抱えているものがあるはず。どんな作品に携わるときも、そういった人間くさい、影のような部分を伝えていけたらいいなと思っているんです。
そのために、演じる役柄の感情を深く考える。何を伝えたいのか、どんな人なのか。考えていくうちに「自分とこんなところが似ているな」と共通点が見つかって、役柄の本当の気持ちに気付けたりすることもあります。
Q.いつも、前向きに役作りに取り組まれているんですね。
そうありたいのですが、1作品に2~3回は自分自身に落ち込んでしまうこともあります。
映画作品だと、初めに台本が渡されるので、自分の中でしっかりと役を作って、「こういう風に演じたい」「これくらいの感情を出したい」という気持ちと共に撮影に臨むのですが、お相手と合わせたとき、自分の中の「こうやりたかった」という演技とは違う、違和感を感じながら進んでしまうこともあって…。そんな時は「本当にお芝居が下手だ、女優失格だな」って嫌になることもあるんです。
特に、朝ドラ(NHK総合テレビジョン・BSプレミアム『まれ』)を演じていたときは、とても辛くて動悸が止まらないこともありました。
Q.落ち込んだ気持ちの回復方法は?
心の充電ができる場所をなくさないこと。これが、どんなことがあっても演技を続けていけてる原動力です。
どんなに好きなことでも、やりたい気持ちがあっても、時間とともに愛情って擦り減ってしまう。演技に対して愛情を向け続けるためには、心の余裕が大切だと思うんです。
でも、特別なことは必要なくて、家族や友人、恋人など、日常生活の中に充電できる場所があればいいんです。私は、「家族が今日家に来てくれるから美味しいものを作ってあげたいな」とか、そういう生活の中に安らぎを感じます。
中には、過酷な人生を生きた方が良いお芝居に繋がると考えていらっしゃる方もいるかもしれないのですが、私は平凡な生活の中で原動力を見つけています。それに、どんな人の人生にも波があって、実は普通に日常生活を生きることが一番過酷なんじゃないかなと思うこともあるので。
土屋太鳳の女優としてのキャリアは、10歳の時に受けたオーディション「スーパー・ヒロイン・オーディション ミス・フェニックス」からのスタート。当時から女優という仕事に憧れを抱いて映画の世界に飛び込んだという。
Q.演じることにこだわる理由は何ですか?
なぜか分からないけど好きっていうのが本当の好きって、どこかで聞いたことがあるんですけど、私にとって演じるとはそんな感じです。どこが好きかわからないけど、惹きつけられる。そんな感情が、女優を続けられる一番の理由です。
もちろん、作品を見てくださって「悩みのヒントになった」「元気をもらった」というコメントを頂けることもとても嬉しいです。
Q.いま演じてみたい役柄は?
今は、見てくださる方に、一緒に歩んでいるというか「一緒に踏ん張っている」というメッセージを伝えられる作品に携わっていたい。
働く女性の職業ものは特にチャレンジしたいですね。ただ悲しいことがあったで終わらず、そこから一人の女性がどう立ち上がるかを描く物語。自分で動いて、自分で言葉を発して前に出ていかなければならない世界になってきていると感じているので、そういった前向きな役柄を演じることができれば、時代に寄り添えるじゃないかなと思うんです。
Q.いつもポジティブな土屋さん。最近はサスペンスやアクション作品などでシリアスな表情も見せていますね。
ちょっと前までは朝ドラのイメージが強くて、「朝ドラ、見ていました」と声をかけてもらうことが多かった。最近は、青春ものをやらせていただいて、「青春ものやっていたよね」と認識されるようになりました。
でも実は、10代のときは明るい役は少なく、ずっと暗い役柄ばかり。朝ドラを機に、青春ものが増えて、少しずつ役柄が変わっていきました。
その時感じたのは、他のジャンルを数作品やっても、イメージの変化は印象づかないこと。イメージを変えるには、いろいろな役柄にたくさんチャレンジする必要があります。
お話をいただいた役柄が少しずつ変わっていく、その変化が楽しい。ここ最近だと、るろうに剣心をはじめ、出演作で「アクションがかっこよかった」という声が増えてきて、その変化を嬉しく感じています。
そんな土屋の最新作は、映画『鳩の撃退法』。佐藤正午の同名小説を映画化した作品では、小説と現実、そして過去と現在を目まぐるしく交差していく予測不能の話題作だ。これまでは“実写化不可能”と唱えられていたが、主演に藤原竜也を迎え、映画化が実現。土屋は、藤原竜也演じる天才小説家・津田伸一を担当する、編集者鳥飼なほみを演じる。