企画展「北斎かける百人一首」が、東京のすみだ北斎美術館にて、2022年12月15日(木)から2023年2月26日(日)まで開催される。
『百人一首』は、江戸中期頃には一般教養として広く浸透し、次第に狂歌や見立てといったさまざまなかたちで流布するようになった。このように『百人一首』が存在感を増すなか、その歌を絵にして解説することを趣旨として、葛飾北斎の大判錦絵シリーズ「百人一首乳母かゑとき(ひゃくにんいっしゅうばがえとき)」が制作された。27図から構成される同作において北斎は、歌や歌人にまつわる伝承やイメージを取り入れつつ、独自の世界観を展開している。
企画展「北斎かける百人一首」では、北斎の「百人一首乳母かゑとき」から、すみだ北斎美術館が所蔵する23図を公開。また、北斎や門人の浮世絵作品から、江戸時代における『百人一首』事情にも光をあてる。
江戸中期頃、『百人一首』は、解説付きの書物が数多く出回るとともに、教科書や手習いの見本にも取り入れられるなど、一般教養として人びとに浸透するになった。また、ポルトガルから伝来した「カルタ」と結びついて「百人一首かるた」として広まり、より親しまれるものとなった。第1章では、江戸時代の人びとが『百人一首』に抱いていたイメージに着目し、女性が百人一首かるたに白熱する様子を描いた北斎《美人カルタ》などを展示する。
人びとに広く浸透した『百人一首』は、滑稽なものが好まれる世相を反映し、歌をもじった狂歌や、歌人になぞらえた作品、優れたものを100選んだ書物など、さまざまなかたちで流布してゆくこととなった。第2章では、北斎《楊枝屋店先》のように『百人一首』の歌人になぞらえた狂歌に合わせて描いた作品などを通して、江戸期における『百人一首』の発展に光をあてる。
『百人一首』の歌を色鮮やかに表現した「百人一首乳母かゑとき」は、北斎最後の大判錦絵シリーズであり、歌や歌人にまつわる一般的な伝承やイメージに北斎ならではの発想を取り入れている。たとえば、小野小町の「花の色はうつりにけりないたつらに わか身よにふるなかめせしまに」に対しては、春の農村の日常風景を描くことで、毎年咲いては散る儚い桜と、平凡な日常を過ごしながら年老いてゆく小町自身の姿を対比した歌意を絵で表していると考えられる。また、「色はうつりにけり」から、染め物をする人の姿も描きこまれている。
第3章では、「百人一首乳母かゑとき」全27図のうち、すみだ北斎美術館が所蔵する23図を前期・後期にわけて展示。また、歌人・赤染衛門を主題に銀摺や空摺を取り入れつつ制作された北斎《五歌仙 月》など、北斎や門人が『百人一首』の歌人を題材に手がけた作品も目にすることができる。
企画展「北斎かける百人一首」
会期:2022年12月15日(木)〜2023年2月26日(日) 前後期で一部展示替え予定
[前期 12月15日(木)〜1月22日(日) / 後期 1月24日(火)〜2月26日(日)]
会場:すみだ北斎美術館
住所:東京都墨田区亀沢2-7-2
開館時間:9:30〜17:30(入館は17:00まで)
休館日:月曜日(1月2日(月・振替休日)・9日(月・祝)は開館)、年末年始(12月29日(木)〜1月1日(日・祝))、1月4日(水)・10日(火)
観覧料:一般 1,000円(800円)、高校・大学生 700円(560円)、65歳以上 700円(560円)、中学生 300円(240円)、障がい者 300円(240円)、小学生以下 無料
※( )は前売券料金(2022年12月14日(水)まで販売)
※会期中観覧日当日にかぎり、AURORA(常設展示室)および常設展プラスもあわせて観覧可
※中学生、高校生、大学生(高専、専門学校、専修学校生含む)は生徒手帳または学生証を提示
※65歳以上は年齢を証明できるものを提示
※身体障がい者手帳、愛の手帳、療育手帳、精神障がい者保健福祉手帳、被爆者健康手帳などの所持者および付添者1名までは、障がい者料金にて観覧可(入館時に身体障がい者手帳などを提示)
【問い合わせ先】
すみだ北斎美術館
TEL:03-6658-8936 (9:30〜17:30 / 休館日のぞく)