企画展「自然という書物─15~19世紀のナチュラルヒストリー&アート」が、東京の町田市立国際版画美術館にて、2023年3月18日(土)から5月21日(日)まで開催される。
古来より人間は、動植物や地球上の地勢・地質といった自然物や自然環境を、言葉と絵を用いて記録してきた。このような自然描写が浸透する際、活字と版画などの印刷技術は大きな役割を果たしている。さらに、自然が美術の着想源となる一方、美術の表現手法もまた、自然の図解に用いられてきた。
企画展「自然という書物─15~19世紀のナチュラルヒストリー&アート」は、人間が紙上に表してきた自然の図像表現を紹介する展覧会だ。15世紀から19世紀にかけての西洋の「ナチュラルヒストリー=自然誌/博物学」と「アート=美術/技芸」の繋がりに着目し、版画による「イラストレーション(図解)」の歴史をたどってゆく。
中世ヨーロッパの自然観は、創造主である神の存在、想像力、そして規範となる書物の知識によって形成されていた。15世紀になると実際の観察に基づく自然の記述・描写がなされ始め、16世紀には学者と画家・版画家の協働による草本誌が刊行されるようになった。このように、実見に基づく記録がなされる一方、動植物はさまざまな寓意を担ってもいた。第1章では、想像と現実の間にあった、15〜16世紀における自然の姿を紹介する。
17世紀には、望遠鏡や顕微鏡といった光学機器の発達により、肉眼では捉えることのできない自然の細部に光があてられるようになった。また、大航海時代を経て、記述・描写の対象となる自然の範囲も広がりを見せた。さらにこの時代、書物の挿絵においても、木版画より精緻な表現が可能な銅版画が用いられるようになった。第2章では、自然に対する視線が詳細さと精緻さを増していった17世紀に着目して展示を行う。
18世紀は、自然を分類・解剖してゆく時代であった。その代表的な例が、1735年に刊行されたカール・フォン・リンネの『自然の体系』である。同書は、1749年より刊行が始まったジョルジュ=ルイ・ルクレール・ド・ビュフォンの『動物誌』とともに、現代へと通ずる動植物の分類体系の基礎を築いたものだといえる。また、版画技法面においても、多色刷りの発達やリトグラフの発明などを背景に、自然を記述・描写するうえでの解像度を高めていった。第3章では、18〜19世紀における自然の図説に光をあて、アレクサンダー・フォン・フンボルト『新大陸赤道地方紀行』やフィリップ・フランツ・フォン・シーボルト『日本動物誌』などを展示する。
動植物は、書物の中で図説されるばかりでなく、装飾モチーフとして紙面を彩るものでもあった。また、自然の捉え方が美術に反映される一方、美術の表現手法が自然の図解に用いられる場合もあった。第4章では、自然の造形を活かした「デザイン」、自然を絵画的に表現する「ピクチャレスク」、そして自然を着想源とした「ファンタジー」をキーワードに、自然と美術の繋がりを紹介する。
企画展「自然という書物─15~19世紀のナチュラルヒストリー&アート」
会期:2023年3月18日(土)〜5月21日(日) 会期中に一部の展示替えと書籍のページ替えあり
[前期 3月18日(土)〜4月16日(日) / 後期 4月18日(火)〜5月21日(日)]
会場:町田市立国際版画美術館 企画展示室1・2
住所:東京都町田市原町田4-28-1
開館時間:10:00〜17:00(土日祝日は17:30まで)
※入場はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日
観覧料:一般 900円(700円)、高校・大学生 450円(350円)、中学生以下 無料
※( )内は20名以上の団体料金
※初日3月18日(土)、開館記念日4月19日(水)は入場無料
※シルバーデー(毎月第4水曜日:3月22日、4月26日)は65歳以上の入場無料
※身体障がい者手帳、愛の手帳(療育手帳)、精神障がい者福祉手帳の所持者および付添者1名は半額
【問い合わせ先】
町田市立国際版画美術館
TEL:042-726-2771