カナコサカイと写真家・川谷光平のコラボ展示が新丸ビルで - 偶然が織りなす移ろいのイメージ

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カナコサカイ(KANAKO SAKAI)と写真家・川谷光平のコラボレーションによる展示が、東京の新丸の内ビルディングにて、2023年3月30(木)まで開催される。

肌理と偶然性

カナコサカイは、日本各地で培われたきた素材と技術を活かし、洗練されたウェアを手がけている。その眼目のひとつに、素材が有する「肌理」の豊かさがある。川谷光平とのコラボレーションでは、デジタル写真における「肌理」に関心を抱く作家の視点から、カナコサカイの2023年春夏コレクションを題材とした写真作品《REFILL》を川谷が制作。新丸の内ビルディングのウィンドウで展示する。

カナコサカイの2023年春夏を象徴するアイテムが、日本の伝統技法である「墨流し」や「ぼかし染め」を用いたトレンチコートなどだ。たとえば墨流しは、水面に染料を落とした際に生じる流動的な模様を紙や布にうつしとる技法であり、平安時代には貴族の遊びとして嗜まれていた。また、日本の墨流しは、シルクロードを経てヨーロッパへと伝わり、マーブリング技法の確立にも影響を及ぼしたともされている。

ヨーロッパのマーブリング技法は、染料の粘度や描画に用いる器具によって高い操作性を有し、人の意図を反映しやすい点に特徴がある。それに対して日本の墨流しは、むしろ偶然によって織りなされる。筆のかすかな動き、あるいは水面に吹きかける息吹によって移ろいゆく一瞬の模様を定着させる墨流しは、自然を完全に人間の意図のもとに置こうとはしない感覚を反映しているといえる。

カナコサカイとのコラボレーションにおいて川谷は、イメージ生成の過程を部分的に偶然へと委ねるという、墨流しなどの技法に見られる感覚を着想源に制作を行った。その作品《REFILL》は、2023年春夏のアイテムを主にモチーフとしつつ、霞のかかったような色彩の階調を帯びている。これは、画像編集ソフトウェアの自動再描画ツールによるものだ。

通常、自動再描画ツールの塗りつぶし機能は、画像内の不用物を除去したり、情報が抜けたデータを埋め合わせるために用いられている。川谷は、自動的に画像を補完する機能を新たにイメージを生成するために活用することで、個々のウェアのディテールや素材の質感を際立て、色彩と肌理とが交わる流動的なイメージを生みだした。

なお、本展示は、ファッションブランドブランドが持つ創造性を、さまざまな分野の専門家と協働・分析・再構築して発信するプロジェクト「TOKYO FASHION STRIDE」の第2弾として実施。第1弾では、写真家・細倉真弓とのコラボレーションによる展示を行っている。