特別展「やまと絵─受け継がれる王朝の美─」が、東京国立博物館 平成館にて、2023年10月11日(水)から12月3日(日)まで開催される。
平安前期に成立した「やまと絵」は、以後1000年以上にわたって描き継がれるなか、各時代における最先端の様式を取り入れて、さまざまに変化を遂げてきた。王朝美の伝統を受け継ぎながらも、外来美術の理念や技法との交渉を重ねつつ、新たな表現を志向してきた点に、やまと絵の本質があるといえる。
やまと絵の捉え方は、中国の美術様式に由来する唐絵(からえ)や漢画(かんが)との対概念によって成立しているため、時代によって変化してきた。平安期から鎌倉期頃にかけては、中国的な主題を描く唐絵に対して、日本の風景や人物を描く作品をやまと絵と呼んだ。それ以後は、水墨画といった中国由来の新しい様式による絵画を漢画と呼ぶのに対して、伝統的な様式に基づく作品がやまと絵と捉えられている。
特別展「やまと絵─受け継がれる王朝の美─」は、1000年を超えるやまと絵の展開のうち、特に平安期から室町期までに着目して紹介する展覧会。絵画のみならず、書跡や工芸作品など、やまと絵の美意識を支えた同時代の作品も織り交ぜつつ、国宝や重要文化財を7割超含む約240件の作品を紹介する。
平安期におけるやまと絵の成立と発展は、王朝貴族の文化的営為を大きな基盤としていた。本展の序盤では、貴族の美意識を映しだす書跡や工芸品などとともに、やまと絵の数々を紹介。日本絵巻史上の最高傑作とされる四大絵巻、《源氏物語絵巻》、《信貴山縁起絵巻》、《伴大納言絵巻》、そして《鳥獣戯画》(いずれも国宝)を筆頭に、平安期の恋愛小説を描いた《寝覚物語絵巻》や、装飾を施した唐紙などの上に和歌と漢詩を書写した《和漢朗詠集 巻下(太田切)》(ともに国宝)などを目にすることができる。
鎌倉期においても、やまと絵の展開を担っていたのは宮廷貴族社会であった。しかしこの時代には、単に伝統を踏襲するばかりでなく、写実性に関心を払いつつも人物や風景の理想化を試み、王朝時代に思いを馳せる作品を数多く手がけるなど、新しい動向が見られるようになる。ここでは、平治の乱を題材とする合戦絵巻の名品《平治物語絵巻 六波羅行幸巻》や、一遍が巡った諸国の霊地を描いた《一遍聖絵》(いずれも国宝)、過ぎ去った平安王朝の生活を追慕する《紫式部日記絵巻断簡》(重要文化財)などを展示する。
南北朝・室町期には、モノクロームで描かれた水墨画に対抗するかのように、多彩な色合いと金銀のきらめきを用いた華やかなやまと絵が描かれるようになる。会場では、『源氏物語』の著名な場面を60面の扇面に描いた《源氏物語図扇面貼交屛風》や、中国・明代の花鳥画に由来するモチーフを取り入れつつ、それらを並置してやまと絵ならではの奥行きの希薄な空間表現に仕上げた《四季花鳥図屛風》(重要文化財)などから、やまと絵の成熟にふれることができる。
特別展「やまと絵─受け継がれる王朝の美─」
会期:2023年10月11日(水)~12月3日(日) 会期中に一部作品の展示替え・巻替え・場面替えあり
会場:東京国立博物館 平成館
住所:東京都台東区上野公園13-9
※開館時間、休館日、観覧料などについては追って告知
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