「ティム・バートンの世界」は、ドローイング、ペインティング、写真、立体作品、パペット、動画など、作家自身の所蔵品から約500点の作品を紹介する展覧会。バートンの創作活動を解明するとともに、観る者を独創的な世界へと導く内容だ。
バートンの作品をテーマやモチーフ、プロジェクトをもとに検証するセクションに分かれた会場。それぞれ「アラウンド・ザ・ワールド」、「ホリデー」、「カーニヴァレスク」、「実現されなかったプロジェクト」、「影響を受けた人」、「フィギュア:男?女?生物?」、「ポラロイド」、「誤解されがちなアウトサイダー」と題された。今回は展示品の中から、一般にはあまり公開されなかったプライベートなものや、バートンの過去を振り返る貴重な作品に注目する。
一番始めに登場するセクション「アラウンド・ザ・ワールド」。タイトルが表すように、ここでは撮影のために世界を訪れたバートンが出会った実在の人々を、無意識のうちにとらえた作品を展示。それらは自宅やアトリエから遠く離れた場所で描いているため、バーの紙ナプキンやホテルのメモ用紙などに描かれているのが特徴だ。当時生まれた絵の数々は、現在お馴染みのキャラクターから想起されるものとなる。
無題(『ロミオとジュリエット』) 1981-1984年頃 30.5×40.6 cm
ペン、インク、マーカー、色鉛筆/紙 (c)2014 Tim Burton
次に着目したのは「実現しなかったプロジェクト」というセクション。アイコニックな映画監督として知られているバートンだが、実は映画だけでなく様々な媒体に関わってきた。ここでは映画だけでなく、テレビ、書籍などの中止になったプロジェクトに関する貴重な作品を紹介。バートンはディズニーでアニメーターとして『コルドロン』という映画に関わり、100ものスケッチを仕上げるのだが、実際にアニメーションにはひとつも採用されなかったのだという。彼のそうした作品の数々が、このスペースにて展示。描かれた作品にどこか見覚えのあるのは、後に自身の作品でキャラクターとして登場しているためである。
左) 無題(『オイスターボーイの憂鬱な死』)1997年 15.2 x 20.3 cm ペン・インク・パステル・紙
右) 無題(『オイスターボーイの憂鬱な死』)1998年 27.9 x 35.6 cm ペン・インク・水彩・紙
最後に「誤解されがちなアウトサイダー」のスペースにも触れておきたい。実はこのテーマは、ティム・バートンの作品に一貫して見られるもので、おそらくバートン自身を投影したものと思われる。原型は善意の持ち主でありながら、現実とは大きくかけ離れた世界観をもち、周囲の人々に拒絶されてしまう夢想家。理想的な根拠よりも情熱に動かされがちな心優しいモンスターたちは、代表的なキャラクターとして、『ティム・バートンのコープスブライド(2005)』のコープスブライド、『シザーハンズ(1990)』のエドワード・シザーハンズ、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス(1993)』のジャック・スケリントンなどが挙げられる。ここには、バートンが生み出した、愛すべきはみだし者たちが集結している。
そして、すべての展示を観終えると、ギフトコーナーに立ち寄ることができる。ここでは様々な種類のポストカードをはじめ、Tシャツやタオル、ステーショナリーグッズなどを展開。またフィルムキャラクターのフィギュアを始めとした輸入商品が揃うほか、キャンディや、かりんとうといったスイーツも販売されているので、ユニークなギフトとして、選んでみるのも良いかもしれない。
ティム・バートン本人を招いたオープニングセレモニーの様子 >>
This exhibition is organized by Jenny He, Independent Curator, in collaboration with Tim Burton Productions.