上野の東京国立博物館にて予定されていた、ユネスコ無形文化遺産 特別展「体感!日本の伝統芸能─歌舞伎・文楽・能楽・雅楽・組踊の世界─」の開催が中止。なお、当初は2020年3月10日(火)から5月24日(日)までの会期を予定していた。
雅楽や能楽、そして人形浄瑠璃、歌舞伎、組踊など、日本は豊かな芸能文化を育んできた。異なる時代・地域で生みだされてきたこれらの芸能は、互いを排除することなく影響を与えあい、今にいたるまで伝承されている。
特別展「体感!日本の伝統芸能─歌舞伎・文楽・能楽・雅楽・組踊の世界─」は、舞台の再現などを通して、日本を代表するこれら5つの芸能の歴史や特色を紹介する展覧会だ。とりわけ、さまざまな場面や装束・衣装のデザインに描かれる“自然”に着目し、そこに織りこまれる自然観から芸能同士の関係に光を当てる。
エントランスには、満開の桜の下、歌舞伎の源流「かぶき踊り」を踊る姿を描いた国宝《花下遊楽図屛風》の高精細複製品を展示。加えてプロジェクションマッピングによる幻想的な演出が出迎えてくれる。
全5章構成の第1章では、“歌舞伎”にフォーカス。代表作である『義経千本桜』をテーマに、桜花の咲き誇る吉野山の舞台を再現する。また、明治期の浮世絵師・豊原国周の描いた錦絵や華やかな歌舞伎衣裳の展示に加え、日本最古の映画『紅葉狩』(1899年撮影、国立映画アーカイブ蔵)を上映する。
第2章で扱う“文楽”とは、義太夫節という音楽に合わせた人形劇だ。本章では『本朝廿四孝』の再現舞台を通して、独特の舞台構造とともに、1体の人形を3人で動かす「三人遣い」の操法を紹介。また、登場人物である八重垣姫が、凍りついた湖を白狐の霊力により渡る場面を体感できるコーナーも設置する。
能楽とは、室町時代に観阿弥・世阿弥父子が大成させた、厳粛で優美な歌舞劇“能”と、笑いの要素の強い会話劇“狂言”を指す。第3章では、世阿弥作の能を代表する『井筒』の舞台を再現。草花の模様を取り入れた装束のデザインや、すすきをあしらうことで秋の寂寥感をほのめかす舞台装置「作リ物」には注目だ。
日本の幕藩体制に組み込まれるとともに、中国とも関係を結んでいた琉球王朝。そこで中国からの使者をもてなすために考案された芸能の1つが、歌や踊りを織りこんだ音楽劇“組踊(くみおどり)”だ。第4章では、首里城正殿の御庭に設置された舞台を再現するとともに、沖縄の故事に取材した組踊『銘苅子(めかるしー)』の天女を立体的に展示。また、沖縄特有の多色摺りの模様染めで作られた、色鮮やかな紅型衣裳なども楽しめる。
第5章で取り上げるのは“雅楽”。飛鳥時代に伝来したアジア大陸各地の楽舞を整理・集成した古代の宮廷芸能である雅楽は、日本最古の伝統芸能であるとともに、楽器や装束など、他の芸能とは大きく異なる特色を持つ。本章では、西国の人が蛇を求め得て悦ぶ姿を舞にした『還城楽(げんじょうらく)』をマネキンで再現するとともに、正式な舞楽で用いられる高さ5mの「鼉太鼓(だだいこ)」を展示する。
ユネスコ無形文化遺産 特別展「体感!日本の伝統芸能─歌舞伎・文楽・能楽・雅楽・組踊の世界─」〈開催中止〉
会期:2020年3月10日(火)~5月24日(日)
※開催は中止、詳細は展覧会公式サイトへ
会場:東京国立博物館 表慶館
住所:東京都台東区上野公園13-9
【問い合わせ先】
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)