左からトム・クルーズ、オルガ・キュリレンコ、ジョセフ・コシンスキー
2013年5月31日より公開される、ハリウッド映画『オブリビオン(OBLIVION)』。エイリアンの襲撃を受けて破壊された2077年の地球を舞台に、主演トム・クルーズが孤独なパトロール隊員ジャック・ハーパーを演じる近未来アクションアドベンチャー作品だ。アクションシーンはもちろん、先鋭的なビジュアルセンスに定評のある、『トロン:レガシー』のジョセフ・コシンスキー監督ならではの、壮大で美しい映像や、ミニマルでスタイリッシュなデザインのセットに注目が集まっている。
先が読めないストーリーも本作の大きな魅力。アクション映画と言えど、物語は多層に構築され、新たな発見と予期せぬ展開に観客は翻弄されるだろう。中でも物語の鍵として、魅惑的な演技を見せてくれるのが、謎の美女ジュリア役のオルガ・キュリレンコ。代表作に『パリ、ジュテーム』、007シリーズ『007/慰めの報酬』などを持ち、夏にも主演作の公開を控える注目の女優だ。テレンス・マリック監督映画『トゥ・ザ・ワンダー』でもヒロインに抜擢された。
『オブリビオン』の共演者であるトムや監督と共にプロモーションのため来日していたオルガにインタビューが実現。過酷なスケジュールの中で、映画について、また彼女自身について話してもらった。
今回オルガに与えられたのは、墜落した宇宙船の中で眠ったままジャックに発見され、その後彼の運命を大きく動かしていくという難しい役どころ。
「ジュリアのようにミステリアスな役を演じるのは、とても楽しかったです。前半、彼女が何者かを明かすことができず、感情を隠さなくてはいけないのが難しかったのですが、秘密を握っているのは面白かったですね。あと、観客の皆さんの意表を突きたいという思いもありました。敵なのか味方なのか判断がつかないほど謎めいた演技を試みました。」
ジャックのパートナー ヴィクトリア(アンドレア・ライズブロー)
「トム(トム・クルーズ)はいつも、この映画は2度目に見た時に全く違う印象を与える作品だと言います。本当にその通りで、あの時ジュリアがどう思っていたか、また、ジュリアに対するヴィクトリア(共にミッションをこなす、ジャックのパートナー。演じるのは、マドンナ監督作品の主演として注目を集めた英国出身女優のアンドレア・ライズブロー)の感情など、後からたくさんのことを知ると思います。」
ヴィクトリア(オルガ・キュリレンコ)とジャック(トム・クルーズ)
そんな衝撃的な出会いを果たしたジュリアとジャック。二人の強い絆は”運命”と呼べるだろう。
”運命”を信じるかという質問をオルガに投げかけてみると
「時々運命については考えますが、それが実在する!とは、はっきり言えませんね。でも映画の中では、二人の間に運命を感じずにはいられません。実際のところは、自分の意志決定と、外的要因のコンビネーションによって人生は構成されているのだと思います。私自身の行動にしても、自ら前進し、掴みにいくから起こることも起こるようになる訳で。じっとしていて、頭の上にいつも何かが降って来てくれるとは思いません。」
「人生は、”選択”ですね。ジュリアはみずから行動を起こして切り開くタイプ。逆にヴィクトリアは運命に身を投じて何もしようとしません。私なら、こんな生き方はしたくないです。」と、他にも哲学者サルトルの実論主義と決定論も引用として加えつつ、驚くほど丁寧かつ真剣に答えてくれた。それは、彼女の恋愛観を少し探ってみよう、と気軽に質問したこちらが恥ずかしくなってしまうほどだった。
オルガ・キュリレンコは、とても聡明な女性のようだ。それは彼女の話し方にも滲み出る。インタビューをしたホテル高層階の窓から見下ろしながら、
「私は絶対ここから飛び降りたりしないわ。でもトムならここの壁を登っちゃうかもね」などと、会話の中に時折ジョークを交え、表情をコロコロと豊かに変えながら、質問に対しぽんぽんと言葉が返す。そうかと思えばふっと口を閉ざし、穏やかな眼差しで外の景色を見つめ、深く考えた顔をする。
また、60年間宇宙船の中で眠り続けたジュリアの役作りにあたって、オルガはYouTubeで低体温症や手術後で意識が朦朧とした患者の動画を見て研究したそう。あらゆるところからリサーチして情報を得る真面目でスマートな人柄を伝えるエピソードだ。