金沢21世紀美術館では、「コレクション展1 うつわ」を、2022年10月16日(日)まで開催する。
「うつわ」は、容器としての機能を持つ道具であるばかりでなく、実用性では捉えきれない意味の広がりを有している。「コレクション展1 うつわ」では、2021年度に新たに収蔵された作品を含む金沢21世紀美術館のコレクション作品を中心に、現代美術における「うつわ」を多彩な視点から紹介する。
「うつわ」の歴史をかえりみると、日本の縄文土器は、採集した木の実や動植物を保存したり、植物を煮炊きしたりするための器具として用いられている。一方で、躍動感あふれる装飾や文様を施した土器が数多く残されるなど、実用性にとどまらず、高い装飾性も特徴としている。このように、日々の生活の道具として、そして祭祀や儀礼に用いられる祭式具として、「うつわ」は人間界と自然界をつなぐ役割を担っていたと考えることができる。
また、肉体を指して、魂が宿る「うつわ」と言いあらわすこともある。これは、生死のサイクルにおいて魂は消滅することがなく、容器としての身体に入っては出てを繰り返す、という捉え方である。このように身体を「うつわ」として考えるならば、魂は身体に宿り、その五感を通じて自然界や聖なるものと結びついて、記憶の古層をも呼び起こしうるだろう。
会場では、目に見えるものから見えないものまで、さまざまなものを内包し、あるいは媒介する「うつわ」の機能や概念の多様性に着目しつつ、コレクション作品を紹介。たとえば久野彩子の《うつろう世界》には情報や欲望がひしめく生命都市としての「うつわ」を、アニッシュ・カプーアの《L’Origine du monde》には生命の始まりとしての「うつわ」を、そして田嶋悦子の「コルヌコピア(Cornucopia)」シリーズには、植物や果物の儚い生命を神聖なものに捧げる「うつわ」を、それぞれ見てとることができるだろう。
本展ではこのように、美術、工芸、デザイン、建築といったジャンルの垣根を超えて、「うつわ」という視点からそれぞれの作品を捉え直すことで、新たなものの考え方にふれることができそうだ。
コレクション展1 うつわ
会期:2022年5月21日(土)〜10月16日(日)
会場:金沢21世紀美術館 展示室1・3〜5・13(展示室5は9月11日(日)まで)
住所:石川県金沢市広坂1-2-1
開場時間:10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで) ※観覧券販売は閉場の30分前まで
休場日:月曜日(7月18日(月・祝)、8月15日(月)、9月19日(月・祝)、10月10日(月・祝)は開場)、 7月19日(火)、8月16日(火)、9月20日(火)、10月11日(火)
観覧料:一般 450円(360円)、大学生 310円(240円)、小中高生 無料 、65歳以上 360円
※( )内は20名以上の団体料金
※美術奨励の日(会期中の毎月第2土曜日)は、金沢市民は本展を無料で観覧可(証明書を提示のこと)
※本展観覧券は同時開催の「特別展示:マシュー・バーニー」(会期:5月21日(土)〜9月11日(日))と共通
■出品作家
葉山有樹、アニッシュ・カプーア、久野彩子、イ・ブル、見附正康、中村卓夫、中島晴美、奈良祐希、ピナリー・サンピタク、佐藤卓、田嶋悦子、富本憲吉、マイケル・ロウ ほか
【問い合わせ先】
金沢21世紀美術館
TEL:076-220-2800