展覧会「リアル(写実)のゆくえ 現代の作家たち 生きること、写すこと」が、福岡の久留米市美術館にて、2023年2月11日(土)から4月2日(日)まで開催される。平塚市美術館などでも開催された巡回展だ。
日本の美術では、近代化を推し進める明治期において、西洋に由来する写実表現を本格的に受容するようになった。その一方、日本にはもともと固有の写実表現が存在し、その例を鎌倉期の仏像や江戸期の自在置物などに見ることができる。
このように、出自の異なる2つの写実表現が混在するようになった明治期以降の日本では、洋画家の高橋由一が部分描写を重視する独自の写実絵画を生みだす一方、彫刻家の高村光雲などは伝統的な日本の彫刻に西洋的な造形を組み合わせた精緻な表現を試みた。こうした写実の系譜は、現代の作家にも流れている。展覧会「リアル(写実)のゆくえ 現代の作家たち 生きること、写すこと」では、これらの写実表現がどのように継承され、再考されてきたのかを、現代作家17人の絵画や彫刻から紹介する。
本展の導入では、明治期における写実表現に着目。日本ではすでに江戸期において、動物を金工でかたどるばかりでなく、その関節までも動かせる「自在置物」のように、固有の写実表現が存在していた。そうしたなかで西洋に由来する写実表現を受容していった過程を、高橋由一の油彩画や、松本喜三郎などによる「生人形(いきにんぎょう)」などから紹介する。
「彫刻」という概念は元来日本にはなく、明治期に入って翻訳語として生まれたものであった。本展では、現代において「彫刻」を手がける作家が、松本喜三郎や高村光雲などから何を受け継いでいるのかに着目。松本喜三郎の下絵をもとにその再現を試みる小谷元彦や、異なる素材の質感を漆芸で再現する若宮隆志などの作品を展示する。
高橋由一は、遠近法をはじめとする合理的な技法を学ぶ一方、絵画における精神性も重視していた。本展では、自身の精神性を表現する手段として写実を選んだ作家に光をあて、長い時間をかけて制作を行い、対象の変化と自身の実感をカンヴァスへとうつす水野暁をはじめ、横山奈美や深堀隆介などを紹介する。
展覧会「リアル(写実)のゆくえ 現代の作家たち 生きること、写すこと」
会期:2023年2月11日(土)〜4月2日(日)
会場:久留米市美術館 2階
住所:福岡県久留米市野中町1015
開館時間:10:00〜17:00
※2月11日(土)・25日(土)、4月1日(土)は19:00まで開館
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日
入館料:一般 1,000円(800円)、シニア(65歳以上) 700円(500円)、大学生 500円(300円)、高校生以下 無料
※( )内は15名以上の団体料金
※障害者は手帳の提示により、本人および介護者1名は一般料金の半額
※上記料金で石橋正二郎記念館も観覧可
■出品作家
松本喜三郎、安本亀八、室江吉兵衛、室江宗智、高村光雲、関義平、須賀松園(初代)、平櫛田中、高橋由一、佐藤洋二、前原冬樹、若宮隆志、小谷元彦、橋本雅也、満田晴穂、中谷ミチコ、本郷真也、上原浩子、七搦綾乃、本田健、深堀隆介、水野暁、安藤正子、秋山泉、牧田愛、横山奈美
【問い合わせ先】
久留米市美術館
TEL:0942-39-1131