1737年、アブラハム・ファーブルによって設立。
ファーブル・ルーバ(FAVRE-LEUBA)は、1737年創業のスイス時計ブランド。
280年以上の歴史を有しており、1960年代には世界で初めて腕時計に高度計や水深計を搭載するなど、現在に至るまで一貫して“実用計器”としてのスイス時計を作り続けている。フロンティア開拓の精神に基づき、実用性や新しい技術を追求したエンジニアリングに加え、アイコニックなデザイン性、適正価格での提供を重視。深海から、世界最高峰のエベレストまで使える腕時計を展開している。
傑作モデルとして、「ビバーク」「ディープブルー」「シースカイ」「バシィ」などが挙げられる。
ファーブル・ルーバは日本とのかかわりも深く、1975年、女性として世界で初めてエベレストに登頂した田部井淳子が、登頂成功時に身に着けていた時計としても知られている。
また、ファーブル・ルーバの腕時計は、時計をモチーフとした前作の『仮面ライダージオウ』から、仮面ライダーシリーズの主人公が着用。2018年公開の映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』では、1970年前後に製造された“50年前”の貴重なダイバーズウォッチ「ディープブルー」がキーアイテムの1つとして登場している。令和初の仮面ライダー『仮面ライダーゼロワン』には「ディープブルー」の現行モデル「レイダー・ディープブルー」が登場。
尚、2016年に発表された「レイダー・ディープブルー」は、「ファーブル・ルーバ」を代表するメカニカルダイバーズウォッチ。エベレスト登頂やフリーダイビング世界記録にも貢献した。高い視認性を誇る針や、大きな四角形のインデックス、クッションケース、14角形の風防リングを特徴に持ち、1970年代の人々が思い描いた“未来のデザイン”を再創造したレトロフューチャーデザインに仕上がっている。
1718年、ファーブル・ルーバブランドの礎を築いた初代アブラハム・ファーブル(1702~1790)が、時計職人見習いとして働き始める。
1737年、3月13日、ル・ロックルの独立時計職人として、アブラハム・ファーブルの名前が公式な文書に初めて登場する。
1749年、この頃、アブラハム・ファーブルが「Maître horloger du Locle(ル・ロックルの熟練時計職人)」に選ばれる。
1792年10月1日、創業者の息子であるアブラハム・ファーブル(1740~1823)が、息子のフレデリックとアンリ・ルイと共に、ア・ファーブル&フィルズを設立。
1815年、フレデリック・ファーブルの息子であり、4代目のアンリ・アウグストゥス(1796~1865)がトラヴェール谷のブッテにあるアウグストゥス・ルーバと提携。
1820年、アンリ・アウグストゥス・ファーブルが世界各国を回り、スイスから遠く離れた市場にも精密に作り上げたファーブル・ルーバの懐中時計を広める。
1851年、ファーブル・ルーバの懐中時計が国内外の展示会・博覧会で数々の賞を受賞(1851年ロンドン万博、1853年ニューヨーク万博、1855年パリ万博、1857年ベルン、1865年ポルト、他多数)。
1855年、フリッツ・ファーブル(1828~1877)が父の後継者としてふさわしい経営手腕を発揮し、ヨーロッパ、アメリカ、アジアにおけるファーブル・ルーバの拡大戦略を成功させる。
1865年と1867年、フリッツ・ファーブルがインドを訪れ、インド半島においてファーブル・ルーバブランドを立ち上げる。これにより同地域は瞬く間にファーブル・ルーバにとっての主要市場へと発展する。
1896年、ファーブル・ルーバの本社がル・ロックルからジュネーブへ移転。
1908年、アンリ・ファーブル・ルーバ(1865~1961)がブランドのトップに就任し、ファーブル・ルーバブランドを着実に発展させていく。1961年に世を去るまで、取締役会の理事長を務める。
1925年、ファーブル・ルーバ初のモノプッシャー・クロノグラフを発売。この頃、腕時計が懐中時計に取って代わり始める。
1945年、第二次世界大戦後、ファーブル・ルーバはボンベイに事務所を構えていたことにより、インドでの安定した地位を見込むことになる。そしてスイス、次にヨーロッパ、後にアメリカやアフリカと、他地域における腕時計市場での地位と存在感を少しずつ取り戻していった。
1946年以降、ファーブル・ルーバは定期的にバーゼル時計展示会に出展。1953年からはジュネーブの「Salon Montres et Bijoux(時計宝飾展示会)」にも出展。
1948年、ファーブル・ルーバはクロノメーターなどの精密腕時計を製造し、その際立った精度によりヌーシャテルの天文台から複数の最優秀賞を授与される。
1955年、シーチーフ、シーキング、シーレイダーなどのウォッチモデルに使用したファーブル・ルーバの自社製ムーブメントFL101キャリバーを発表。
1957年、ファーブル・ルーバはデイティックモデルに使用したカレンダー搭載のFL102キャリバーを発表。その後、自動巻きムーブメントのFL103(カレンダー表示なし)、FL104(カレンダー表示あり)を続々と発表。
1960年、ファーブル・ルーバブランド初のダイバーウォッチ、ウォーターディープを発売。ブランドがこの分野で収めることになる成功の足掛かりを作る。
1962年、ファーブル・ルーバは高度と気圧の測定が可能なアネロイド気圧計を搭載した世界初の機械式腕時計、伝説のモデルであるビバークを開発。
1962年、米国で開催されたパラシュートのワールドカップで、ビバークを身に付けたスイスのナショナルチームが偉業を成し遂げる。また、イタリア人登山家のヴァルテル・ボナッティは、ジュネーブのミシェル・ヴォーシェと共に初めてグランドジョラスのウィンパー峰(4,196m)の北壁の登頂に成功した際、および、1964年に最短ルートでマッターホルンの北壁を制覇した際も、その腕にビバークを着用していた。
1963年、ワリサー・ミシェル・ダルブレーは初めてのアイガー単独登頂に成功した際に、ファーブル・ルーバの工房で製作された腕時計を着用。
ファーブル・ルーバが特許を取得したツインバレルのFL251キャリバー(直径11.5リーニュ、厚さわずか2.95mm)は、センターセコンドのエクストラフラットムーブメントの中でも、革新的なムーブメントとなる。
1963年、ディープブルー:ファーブル・ルーバの自社工房で製作した初のダイバーウォッチを発表してから3年後、200m防水のディープブルーを発売。
自社製ムーブメント:ファーブル・ルーバが、ジュネーブ近郊のプチ・ランシーに新設した本社で、自社製ムーブメント製造を再導入する。その結果として、19世紀末時点の社名、Manufacture d’Horlogerie Favre-Leuba S.A(ファーブル・ルーバS.Aの時計工場)を再び名乗ることになる。
1967年、モントリオール万国博覧会で、ファーブル・ルーバがFédération Horlogère Suisse(スイス時計協会)の「クロノグラフ・スポーツウォッチ」部門の最優秀賞を受賞。
1968年、ファーブル・ルーバより潜水時間のみならず、現在の深度も表示できる世界初の機械式腕時計、バシィ50を発売。
またファーブル・ルーバは画期的なツインバレルキャリバーの自動巻きモデルを発売する。これにより、ツインバレルで自動巻きの腕時計の量産化に成功した初のブランドの1つとなる。新しいムーブメントは、カレンダー機能の有無にかかわらず利用可能だった。
1970年、1960年代後半から70年代前半にかけて、ファーブル・ルーバは当時の流行を意識したピローケースのモデルが数種類発売される。日付およびカレンダー表示を搭載したシーレイダーの中では自動巻きキャリバーのFL1164は毎時36,000振動のモデルであり、メモレイダーは自動巻き機構にアラーム機能を備えていたことにより、世界中の顧客に歓迎されるモデルとなる。
ファーブル・ルーバより同時発売されたシースカイおよびシースカイGMTモデルは、ダイバーウォッチ機能とクロノグラフ機能、24時間表示を兼ね備えていた。
1985年、安価なクオーツ・ムーブメントの登場により、スイスの腕時計業界は深刻な危機に陥り、ファーブル・ルーバの工房もその影響を受ける。その後1980年代に一族は、ファーブル・ルーバブランドの売却を余儀なくされる。以降、数回にわたって会社の所有者が替わることなる。
2011年、11月16日、タタ・グループが伝統あるファーブル・ルーバブランドを買収し、本社をツークへ移転。
2012年、新規チームがファーブル・ルーバの歴史とその伝説的なタイムピースを徹底的に研究した結果、技術面およびデザイン面において歴史と伝統を受け継ぐ高機能腕時計コレクションが誕生。
2016年、ファーブル・ルーバは、時刻をユニークな方法で表示する究極のダイバーズウォッチ、レイダー・ハープーンを発表。
2017年、創業280周年を記念して、標高の制限をとりはらった究極の時計「ビバーク9000」をバーゼルワールドにて発表。
2018年、2017年末に発売されたレイダー・ビバーク9000はウォッチスターズ2017/18のNew Stars部門のグランプリに。
ファーブル・ルーバは1968年に発売されたブランドを代表するモデル「バシィ」の発売50周年を記念し、「レイダー・バシィ120メモデプス」を発売。
2018年、レイダー・ビバークを身につけた日本のチーム、イギリスのチームが相次いでエベレスト山頂へ到達。機械式腕時計としては世界で唯一、高度9000mまで測定できるその実用性を証明した。