世界的な画家、田村修三の展覧会で大事件が起きた。展示作品のひとつが贋作だとわかったのだ。この絵を描いたのは一体、誰なのか? 連日報道が加熱する中、北海道 ・小樽で女の死体が発見される。このふたつの事件の間に浮かび上がった男。それは、かつて新進気鋭の天才画家と呼ばれるも、ある事件を機に人々の前から姿を消した津山竜次だった。
かつての竜次の恋人で、現在は田村の妻・安奈は小樽へ向かう。もう会うことはないと思っていた竜次と再会する安奈、竜次に長年仕える謎のフィクサー ・スイケン、贋作事件を追う美術鑑定の権威・清家、全身刺青の女・牡丹、竜次を慕うバーテンダー・アザミ、それぞれのドラマが“真の美”を求め続ける竜次の想いと交錯していく……。
映画『海の沈黙』は、倉本聰が長年にわたって構想し、「どうしても書いておきたかった」と語る渾身のドラマを映画化した作品。倉本聰の最期の映画となる。監督は若松節朗。人々の前から姿を消した天才画家を主人公に、美と芸術への怨念や壮絶な生き様、そして愛の物語を描き出す。