展覧会「若林奮 森のはずれ」が、東京の武蔵野美術大学 美術館・図書館にて、2023年6月1日(木)から8月13日(日)まで開催される。
若林奮(わかばやし いさむ)は、戦後日本を代表する彫刻家だ。鉄を主な素材に、自身と周縁世界の関係性をめぐる思索を内包したその作品は、自然、距離、時間、空間、表面、境界など、人びとを広く取り巻く事象を捉えている。
展覧会「若林奮 森のはずれ」は、若林の1980年代の代表作《所有・雰囲気・振動─森のはずれ》を、約30年ぶりに再展示するもの。同作は、若林が武蔵野美術大学に在任していたおりに手がけたものであり、若林彫刻を特徴付ける種々の概念が含まれる重要な作品である。加えて、70〜90年代の大型彫刻、ドローイングやマケットなどもあわせて展示し、若林の思考を探ってゆく。
1973〜74年、パリを拠点に旧石器時代の遺跡を訪れた若林は、その周縁にある洞窟や地層、洞窟画などを目にし、積み重なってゆく不可知な事象をいっそう意識するようになった。そうしたなかで若林は、自然をいち対象としてではなく、自身を含んだ世界を認識するものとして彫刻化することを試みるようになる。こうした意識の下で制作されたのが、連作「振動尺」だ。これは、自身と世界の距離を振動によって捉える尺度であり、70年代後半以後の若林彫刻に通底する概念となる。
こうした70年代の思索を経て制作されたのが、《所有・雰囲気・振動─森のはずれ》だ。武蔵野美術大学にある工房の一部をそのまま彫刻化した「鉄の部屋」に、「振動尺」を据え置いた同作は、自ら触知できる、あるいは所有できる空間を「部屋」として作りだし、その境界や範囲を明示することで、自身を起点とする周縁の自然への思索を深めていったものだといえる。
本展では、この《所有・雰囲気・振動─森のはずれ》を修復し、植物の姿を彷彿とさせる90年代の連作「Daisy I」全10点とともにひと続きの空間で展示。自然や植物をめぐる観察と考察から生まれたこれらの作品を通して、若林の活動中期から後期にかけて顕著に見られる、自然や風景に関わる側面に光をあてる。
展覧会「若林奮 森のはずれ」
会期:2023年6月1日(木)〜8月13日(日)
会場:武蔵野美術大学 美術館展示室2・4・5、 アトリウム1・2
住所:東京都小平市小川町1-736
開館時間:11:00〜19:00(土・日曜日、祝日は10:00〜17:00)
休館日:水曜日
入館料:無料
■同時期開催
・展覧会「MAU M&Lコレクション:絵画のアベセデール」
会期:2023年6月1日(木)〜7月2日(日)
・展覧会「三浦明範─vanitas vanitatum」
会期:2023年7月15日(土)〜8月13日(日)
【問い合わせ先】
武蔵野美術大学 美術館・図書館
TEL:042-342-6003