このようなガウディの合理的精神は、幾何学の重視にも見てとれる。ガウディは、自然から得られたイメージに幾何学を重ねることで、合理的な構造を備えた独自の造形を育んでいった。その代表的な例が、放物線を描くパラボラ・アーチである。
楕円や双曲線とともに、円錐曲線の一種である放物線は、釣り合いの取れたアーチとしてその合理性を認められつつも、実際の建築に使用されることがほとんどなかった。これは、円弧に比べて施工が難しく、また斜めに立ち上げる部分が歩行の障害になるためであった。しかし、ガウディは自然の洞窟に放物線を見出し、これを建築に取り入れることを試みている。また、放物線を回転させれば、回転放物面と呼ばれる立体が得られる。これはたとえば、サグラダ・ファミリア聖堂の鐘塔に導入され、ガウディの建築を象徴するものとなったのだ。
ガウディの没後、サグラダ・ファミリア聖堂は、スペイン内戦による中断を挟みつつも、約90年にわたって建設が続けられている。現在の主任建築家は9代目であるように、この建築はひとりの建築家によって手がけられたものではない。それでもなお、パラボラ塔群を備えた外観、内部の樹木式構造、象徴的な「降誕の正面」、あるいは多彩色の鐘塔頂部など、聖堂の随所にガウディの独創性が息づいているのだといえる。
企画展「ガウディとサグラダ・ファミリア展」
会期:2023年6月13日(火)〜9月10日(日) 会期中に一部展示替えあり
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
開館時間:10:00〜17:00(金・土曜日は20:00まで)
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日(7月17日(月・祝)は開館)、7月18日(火)
観覧料:一般 2,200円(2,000円)、大学生 1,200円(1,000円)、高校生 700円(500円)
※( )内は20名以上の団体料金
※中学生以下、障がい者手帳の所持者および付添者(1名)は無料(入館時に学生証などの年齢のわかるもの、障がい者手帳などを提示)
※内容は変更となる場合あり(最新情報については展覧会公式サイトなどにて確認のこと)
■巡回情報
・滋賀会場
会期:2023年9月30日(土)〜12月3日(日)
会場:佐川美術館
住所:滋賀県守山市水保町北川2891
・愛知会場
会期:2023年12月19日(火)〜2024年3月10日(日)
会場:名古屋市美術館
住所:愛知県名古屋市中区栄2-17-25(芸術と科学の杜・白川公園内)
【問い合わせ先】
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)