ラファエル・ザルカ、作品の「生」

作られたあとの作品の「生」。これもまた、ひとつの「エコロジー」として捉えることができる。美術作品の流用と再利用に着目してきたラファエル・ザルカを取り上げるのは、こういった視点においてだ。たとえば、モノクロの写真からなる「ライディング・モダンアート」シリーズは、世界各地のパブリックアートの上をスケートボーダーが滑る様子を捉えた作品。目を疑ようなスケートボーダーの大胆な滑りは、ややもすれば街のいち景物と化しているパブリックアートの造形をなぞり直すことで、新たに息吹を吹き込んでいるのだ。

一方、《斜方立方八面体のカタログ・レゾネ》は、幾何学的な形態のひとつ「斜方立方八面体」にまつわるザルカの探求から生まれたもの。立方体を部分的に削り落としたようなこの立体は、時代を通じて美術作品のモチーフや建築物、人工構造物、果ては商品パッケージにまで用いられてきた。斜方立方八面体の形は、とくだん美しいわけでも、実用性に富むわけでもないにもかかわらず、いやだからこそ、そこに「謎めいた雰囲気」が満ち満ちて、人はそこに何がしかの意味を認めたくのだろう。何より、有用性や意味に回収しきれないこの「謎」こそ、作品を作品として生かすものなのだから。

第1期“自然との共存をめぐる対話”崔在銀の個展

なお、本展に先立つ「エコロジー：循環をめぐるダイアローグ」展の第1期では、環境や自然との対話を継続してきたアーティスト崔在銀(チェ・ジェウン)を、個展形式で紹介した。

>>詳細はこちら

展覧会概要

展覧会「エコロジー：循環をめぐるダイアローグ」
ダイアローグ2 「つかの間の停泊者」ニコラ・フロック、ケイト・ニュービー、保良雄、ラファエル・ザルカ
会期：2024年2月16日(金)〜5月31日(金)
会場：銀座メゾンエルメス フォーラム 8・9階
住所：東京都中央区銀座5-4-1
開館時間：11:00〜19:00(入場は18:30まで)
※開館日や開館時間は、エルメス銀座店の営業に準ずる
観覧料：無料

【問い合わせ先】
銀座メゾンエルメス フォーラム
TEL：03-3569-3300