特別展「Photograph 記憶の花 藤原更 Sarah Fujiwara」が、名古屋のヤマザキマザック美術館にて、2024年4月26日(金)から6月30日(日)まで開催される。
藤原更(ふじわら さら)は、写真を用いつつ、写真では捉えきれなかった「記憶」を表現することを試みてきた現代美術家だ。コマーシャルフォトグラファーとして第一線で活躍していた藤原は、1999年に美術の領域へと転向。以後、「光と時間を駆使して瞬間を切り撮る写真」に、記憶の曖昧さを反映する多様な手法を加えつつ作品を手掛けてきた。
特別展「記憶の花 藤原更」は、藤原の「花三部作」より、作品約30点を紹介する展覧会。芥子の記憶の再現を試みた「メルティング・ペタルズ(MELTING PETALS)」、薔薇の花弁を至近距離で撮影した「ラ・ヴィ・アン・ローズ(LA VIE EN ROSE)」、そして蓮の茎を捉えた「ネウマ(NEUMA)」を展示する。
藤原は、かつてフランスで撮影した芥子畑の写真が、自身の記憶にある芥子畑とあまりにも異なることに気付き、記録写真をもとに記憶の芥子を表現したいと考えるようになったという。こうして生まれたのが、「メルティング・ペタルズ」シリーズだ。同作では、過去に撮影した芥子の写真をプリントし、ライティング技術を用いてさまざまな光をあてるとともに、剥離やぼかしを加えることで、記憶に残る芥子の姿を甦らせることを試みている。会場では、同作のインスタレーションも展開する。
藤原の作品は“写真=photo(光)-graph(書く)”の語源に忠実に、「光で描く」という発想に基づいて制作されている。薔薇を写した「ラ・ヴィ・アン・ローズ」シリーズにも、その考えが反映されている。光源の光の色を表す尺度である「色温度」に着目し、限られた時間帯に撮影された薔薇の写真は、プリントした層の奥に光を乱反射する層を重ねた二層構造をとることで、見え方が様々に変化する艶やかな画面に仕上げられている。
「ネウマ」シリーズは、泥の中で枯れ折れた蓮の茎を撮影した写真でありながら、そこには目で見る光景とはまったく異なる色合いが表れている。大判カメラとインスタントフィルムで蓮の茎を撮影した藤原は、手の温もりや水を使ってフィルムの温度調整を行ったり、太陽光を取り入れたりと、自然の力を借りつつこの作品を手がけたのだった。
特別展「Photograph 記憶の花 藤原更 Sarah Fujiwara」
会期:2024年4月26日(金)〜6月30日(日)
会場:ヤマザキマザック美術館
住所:愛知県名古屋市東区葵1-19-30
開館時間:平日 10:00~17:30 / 土・日曜日、祝日 10:00~17:00
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日(4月29日(月・祝)、5月6日(月・振)は開館)、5月7日(火)
入館料:一般 1,300円(10名以上 各1,100円)、小学・中学・高校生 500円、小学生未満 無料
※各種障害者手帳(ミライロID可)の提示者および同伴者1名は各1,100円
※音声ガイド無料サービス
【問い合わせ先】
ヤマザキマザック美術館
TEL:052-937-3737