展覧会「野口里佳 不思議な力」が、東京都写真美術館にて、2022年10月7日(金)から2023年1月22日(日)まで開催される。
野口里佳は、1992年に写真の制作をスタートし、国内外の展覧会を中心に写真・映像作品を発表してきた。これまでに水中や高地、宇宙といった未知の領域と人間の関わりをテーマに作品を手がけており、近年は、日常や周囲にあふれる小さな謎を探ることで、見る者の感覚や想像を解き放つような表現を追求している。
5年ぶりの個展となる「野口里佳 不思議な力」では、新作「さかなとへび」や「とぶもの」、「ヤシの木」をはじめ、初公開となる「不思議な力」の最新作、そして初期作品「潜る人」といった過去の代表作や近作を紹介。写真作品を中心に、近年取り組んでいる映像作品、そしてドローイングが互いに呼応しあうかのように展示し、会場をひとつのインスタレーションのように構成する。
野口は、これまで自らが手がけてきた作品はすべて、“不思議な力”にまつわるものであったと振り返る。“不思議な力”とは何か。2013年に父を亡くした野口は、生前よく写真を撮っていた父が遺したネガを譲り受け、自らプリントすることを試みた。それは、家族や風景へと向けられる父の視線を追ってゆく体験にほかならなかった。「父のアルバム」として発表されることになるこのシリーズを契機に、野口は、写真には過去と現在という時間の隔たりを超えて、他者に体験したことや感じたことを伝える“不思議な力”があると考えるようになったのだ。
この“不思議な力”という言葉は、本展の起点となるシリーズのタイトルでもある。2014年に発表された同シリーズは、父が遺したカメラを用いて、自身の日常を撮影した作品から構成されている。日常は目に見えない不思議な力で溢れていると考える野口は、重力や表面張力、磁力といった目に見えない力を、小さな科学実験の要領で可視化し、カメラで捉えた。いわば、世界のなかで自らが働きかけることで生じる現象を、“不思議な力”として可視化することを試みたのだった。
夜の海に潜って光の進む様子を撮影した「海底」、怖がって避けていた虫という存在に目を向ける契機となった「クマンバチ」、あるいは、羽虫や木の葉といった森の中の小さな存在が空中に浮遊する映像作品《虫、木の葉、鳥の声》──野口の制作は、どれも写真の「不思議な力」に誘われたものであった。本展では、写真でしかできない表現を追求し、独自の視点でうつしだされた野口の作品から、「不思議な力」を感じ取ることができるだろう。
展覧会「野口里佳 不思議な力」
会期:2022年10月7日(金)〜2023年1月22日(日)
会場:東京都写真美術館 2F展示室
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
開館時間:10:00〜18:00(木・金曜日は20:00まで)
※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日(月曜日が祝休日の場合は開館、翌平日休館)、年末年始(12月29日(木)〜1月1日(日・祝)・4日(水))
※12月28日(水)、1月2日(月・振替休日)・3日(火)は臨時開館
観覧料:一般 700円、大学生・専門学校生 560円、中高生・65歳以上 350円
※オンラインによる日時指定予約が可能
※小学生以下および都内在住・在学の中学生、障害者手帳の所持者とその介護者(2名まで)は無料
※1月2日(月・振替休日)・3日(火)は無料
※開館記念日のため1月21日(土)は無料
※内容は変更となる場合あり(最新情報については美術館ホームページを確認のこと)
【問い合わせ先】
東京都写真美術館
TEL:03-3280-0099