創建1250年記念「奈良 西大寺展 叡尊と一門の名宝」が、大阪・あべのハルカス美術館では9月24日(日)まで、山口県立美術館で2017年10月20日(金)から12月10日(日)まで開催される。
仏教によって国を纏めようとする「鎮護国家」の想いのものと、聖武天皇・光明皇后の後を継いだ娘帝の称徳天皇によって創建された西大寺。奈良時代に創建された官大寺を総称する「南都七大寺」のひとつとしても数えられ、1250年以上たった今でも、数多くの仏教美術の名品を変わらず伝えている。
本展では、西大寺をはじめ一門の各寺院に伝わる超一級の彫刻・絵画・工芸品など優れた仏教美術を紹介する。西大寺と一門の名宝がまとめて公開されるのは、1990~91年に奈良・東京を巡回した「西大寺展」以来、四半世紀ぶりのことだ。
西大寺の創建は、藤原仲麻呂と孝謙上皇との抗争をおさめるこをを祈願して、称徳天皇(孝謙上皇重祚)が始めた。一度は静まった乱であったが、奈良時代の法相宗の僧であった僧道鏡が皇位を狙って失脚。それが原因となって、政情は再び大きく動揺し、やがて都は平安京へ移る。西大寺は、平城京の最後のきらめきとして残されることになった。
そのきらめきを今に伝える国宝と重要文化財が、本展でスポットライトを浴びる。大阪会場では、奈良時代後期を中心に流行した木心乾漆により制作された「塔本四仏坐像」を紹介。この像は、西大寺創建に近い時期までさかのぼり、4軀まとまって伝わる貴重な仏像だ。
都が平安京に移された後、奈良の寺社は苦難の時代を迎え、西大寺の状況も深刻であった。しかし、鎌倉時代に現れた中興の祖、叡尊が、僧侶や市民の集う「光明真言会」を創始するなど精力的に活動。こうして教えは大いに広まり、西大寺独特の文化が創り上げられていった。
山口展で公開される「文殊菩薩騎獅像及び四侍者像のうち文殊菩薩坐像、善財童子立像、最勝老人立像(奈良・西大寺)」は、その頃を象徴する像。叡尊の没後、弟子たちが発願して造像されたもので、叡尊の十三回忌に完成し、文殊堂の本尊とされた。現在は本堂西脇間に安置されている。
また、新たに国宝に指定された「興正菩薩坐像」と重要文化財「愛染明王坐像」も巡回。秘仏とも言われる「愛染明王坐像」は愛染堂の秘仏本尊。長い月日を経た今でも、美しい彩色を留めている。
大阪でのみ展示される「不動明王二童子像(大阪・松林寺)」、山口でのみ展示される「釈迦如来坐像(佐賀・東妙寺)」は、各地へ広がった叡尊の教えと信仰のかたちを表す像だ。鎌倉時代になると、叡尊の教えは要人から庶民まで信仰が広まり、江戸・明治と波乱はあれど現代に至るまで全国各地の寺院で教義を貫き、法灯を守っている。
また、一門の名宝として名高いのが、大阪で特別公開される浄瑠璃寺の秘仏「吉祥天立像」だ。これは、奈良時代以来「吉祥悔過」という法要の本尊として祀られてきた像。ふくよかな容姿、繧繝彩色の文様を施された衣、風をはらんだ袖が、薬師寺所蔵の吉祥天画像(8世紀)に通じる天平美人を彷彿とさせる。
創建1250年記念「奈良 西大寺展 叡尊と一門の名宝」
■大阪会場
会期:2017年7月29日(土)~9月24日(日)
場所:あべのハルカス美術館
住所:大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43
開館時間:火〜金 10:00〜20:00、月土日祝 10:00〜18:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:7月31日(月)、8月7日(月)、8月21日(月)、8月28日(月)
※出品作品は変更となる場合あり。
※各会場とも会期中に展示替えあり。出品作品により展示期間が異なる。
観覧料:一般 1,300(1,100)円、大学・高校生 900(700)円、中学・小学生 500(300)円
※( )内は15名以上の団体料金。
※障がい者手帳提示で、本人と付き添い1名まで当日料金の半額。
問い合わせ先:あべのハルカス美術館 06-4399-9050
■山口会場
会期:2017年10月20日(金)~12月10日(日)
場所:山口県立美術館
住所:山口県山口市亀山町3-1
開館時間:9:00〜17:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日(但し、11月6日、12月4日は開館。)
問い合わせ先:山口県立美術館 083-925-7788