映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』に出演された経緯を教えてください。
『ヘルタースケルター』でご一緒させた頂いた監督の蜷川実花さんからオファーを頂いたので、二つ返事で引き受けました。蜷川さんの描く小栗旬主演の太宰治の物語なんて、絶対素敵に決まっているじゃないですか。だから今回は、脚本の全容を読むこともなく、すぐに「OK!」って返事を出しました(笑)
※『ヘルタースケルター』
2012年に公開された蜷川実花監督作品。全身整形によって誰もが羨む美貌を手に入れた主人公・りりこのスキャンダラスな人生を、沢尻エリカが体当たりの演技で魅せた。
実際に引き受けられてから、沢尻さん演じる太田静子役についてどのように受け止めましたか?
『ヘルタースケルター』で私自身ヘビーな役柄を演じていたので、“今回蜷川さんは、一体どんな重い役を用意しているんだろう…”なんて身構えてしまった自分がいたんですけど(笑)実際静子役は、複雑な人間関係が絡む本作の中で、唯一といってよいほど“ハッピー”なキャラクターでしたので、すごくホッとしましたし、楽しんで演じることが出来ました。
ほかの共演者の方は、重い空気が漂う撮影期間を送る一方、私だけは、「とにかくハッピーで、ルンルンしておいて~!」というオーダーを蜷川さんからいただいていたので、皆さんとのテンションの差はすごかったと思います。(笑)
太田静子は実在する人物でもありますが、実際にどんな役作りに励みましたか?
主には現場に入ってから作り上げていきました。もちろん太田静子さんに関する資料も用意されてはいましたが、参考にしつつという感じ。みっちりと勉強しなくても、蜷川さんのセットや衣装は、細部にまでこだわりが詰め込まれているので、私にとってはその場に立つことが一番作品の世界観を理解できましたし、役作りにも繋がったと感じています。
※太田静子についての補足
太宰治の愛人の一人であり、歌人・作家。太宰の代表作『斜陽』に日記を提供したことで知られている。太宰との間には、1人子供をもうけている。
“愛人役”はこれまでにも経験はありますか?
実は今年TVドラマ『白い巨塔』でも愛人役をやらせていただいたので、愛人役が続きました。2019年は、まさに“愛人YEAR”ですね。(笑)愛人という立場は、決して日の当たることができない“日陰の存在”ではありますが、そこに自分の楽しさを見出していくような“闇”があって、演じるたびに新たな発見があります。
“禁断の恋”の相手となる、小栗さん演じる太宰治は沢尻さんから見ていかがでしたか?
本当にかっこよかったです。それに尽きる!
実際に現代にいたらどう思います?
それはマズイかな。もう炎上なんて騒ぎではないと思いますし、私は絶対に関わりたくない(笑)
きっとあの時代だったからこそ、彼はあの魅力と才能を存分に放つことができたのだと思います。いるべき時代と場所に生まれた方なのではないかと思います。
今回の出演で改めて感じた、“蜷川作品の魅力”を教えてください。
やはり私は、女性ならではの視点を活かした蜷川さんの世界観が大好きなんです。特に今回は、太宰治の物語を“女性登場人物の視点”で切り取るという、蜷川さんだからこそ成立した作品だと思います。“女にしか分からない世界”って必ずあると思うので、この作品を男性が手掛けていたら全く別のものになっていたと思います。
蜷川監督の描く恋愛シーンで困ったことは?
実は、私も蜷川さんも『ヘルタースケルター』の撮影を通して、そういった場面での感覚がおかしくなってしまってるんですよ(笑)『人間失格 太宰治と3人の女たち』でもベッドシーンはあるんですけど、「今回は、おとなしめだね」なんて話をしてしまったほど、スムーズに撮影が終わりまして。(笑)
私は役柄を演じる上においては、“脱ぐ”ということに対してあまり抵抗を感じないタイプでもあるんですけど。
逆に『ヘルタースケルター』の時は、一体どんな演出をされていたのでしょう?
もう随分昔のことなので、細かいことは忘れてしまいましたが、「もうガンガンいこう!」ていうテンションだったことだけ覚えています(笑)実際は、すごく大変な現場でしたけどね。それでもあの作品は、20代の私の糧となった大切な作品。だからこうして再び蜷川さんとタッグを組めたことは、非常に光栄な出来事でした。
小学校6年生の時に事務所に入り、モデルからキャリアをスタートさせたという沢尻エリカ。その後、現在まで続く“俳優”としての道をどのように切り開いていったのか話を伺った。