Q:映画監督としてやるべきこと、大切にしていることは。
ストーリーを語りたい。アーティストとして、人に感動を与えたい。僕が映画監督をしている理由はそれだけです。
もちろん、僕自身が出演者たちに指示を出して、作品を上手く表現してもらうことは大事ですが、もっと大事なのはその先で、映画を通して、観客にも“登場人物たちの経験”を体験してもらうことです。映画を見る前と見終わった後で、少しでも違う考えや思いを抱いてもらえると嬉しい。作品が観客の心に届くまでの道筋を作るのが映画監督としての役目なのだと思います。
刹那の恋に燃える美しき少年2人には、オゾン自らオーディションで見出した注目の新鋭俳優が起用された。
主人公・アレックス(=フェリックス・ルフェーヴル)
主人公のアレックスは、進路に悩むシャイな16歳の少年。ダヴィドと運命的な出会いを果たし、ひと夏の間に初めての恋と永遠の別れを経験することになる。そんな人生を揺るがす初恋に喜び、悶え苦しむ純真な少年を演じるのは、フェリックス・ルフェーヴル。オーディションで「彼こそアレックスだ」とオゾンに言わしめた彼の演技に注目だ。
ダヴィド(=バンジャマン・ヴォワザン)
ダヴィドを演じるのは、俳優だけでなく脚本家としても活動する若手俳優のバンジャマン・ヴォワザン。当初アレックス役としてオーディションを受けるも、オゾンによってダヴィド役に抜擢された。ダヴィドは、母親が切り盛りする船具店で働く18歳。アレックスとは対照的に、アグレッシブで刹那的な生き方をしている。彼とは深い愛情で結ばれるも、不慮の事故で命を落としてしまう。
ケイト(=フィリッピーヌ・ヴェルジュ)
アレックスが海辺で知り合う21歳の女性。明るく親しみやすい性格だが、やがてアレックスとダヴィドの関係に亀裂が生じるきっかけとなってしまう。演じるフィリッピーヌ・ヴェルジュは、ベルギーとイギリスにルーツを持つ若手女優。
<その他キャスト>
ゴーマン夫人(=ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ):夫が残した船具店を営むダヴィドの母。息子の“親友”アレックスを気に入り、可愛がっている。
ロバン夫人(=イザベル・ナンティ):家庭を守るアレックスの母。ダヴィドと出会い次第に変わっていく息子を、心配そうに見守っている。
ルフェーヴル先生(=メルヴィル・プポー):アレックスの進路指導の先生。悩める彼をサポートすべく優しく寄り添う。
劇中には、THE CUREの「In Between Days」など80年代を代表する楽曲が使用されている。特に、往年のロックスター、ロッド・スチュワートによる名曲「Sailing」が響く、クラブで激しく踊りあかす2人ワンシーンは、本作の印象的な場面のひとつであり、オゾンが“映画のコア”と語るシーンだ。
オゾン監督こだわりのフィルム撮影による映像美とともに、少年たちが織りなすひと夏の恋を彩る数々の楽曲にも注目したい。
色鮮やかでノスタルジックな映像美とTHE CUREの「In Between Days」を始めとした80年代のヒットソングが彩りを添える本作は、世界の名だたる映画祭で高い評価を獲得。第73回カンヌ国際映画祭ではオフィシャルセレクションに選出され、第15回ローマ国際映画祭では観客賞を受賞、さらに第46回セザール賞では作品賞や監督賞など12部門にノミネートされた。
映画『Summer of 85』
公開日:2021年8月20日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
監督・脚本:フランソワ・オゾン
出演:フェリックス・ルフェーヴル、バンジャマン・ヴォワザン、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、メルヴィル・プポー
配給:フラッグ、クロックワークス 【PG-12】
原題:Ete 85/英題:Summer of 85
<映画『Summer of 85』ストーリー>
セーリングを楽しもうとヨットで一人沖に出た16歳のアレックス。突然の嵐に見舞われ転覆した彼を救助したのは、18歳のダヴィド。二人は急速に惹かれ合い、友情を超えやがて恋愛感情で結ばれる。アレックスにとってはこれが初めての恋だった。互いに深く想い合う中、ダヴィドの提案で「どちらかが先に死んだら、残された方はその墓の上で踊る」という誓いを立てる二人。しかし、ダヴィドの不慮の事故によって恋焦がれた日々は突如終わりを迎える。悲しみと絶望に暮れ、生きる希望を失ったアレックスを突き動かしたのは、ダヴィドとあの夜に交わした誓いだった─。
『Summer of 85』の公開を記念して、フワンソワ・オゾンの初期代表作『焼け石に水』が、東京・渋谷のBunkamura ル・シネマにて2021年8月20日(金)から8月26日(木)まで35ミリフィルムで特別リバイバル上映される。『焼け石に水』は、弱冠32歳だったフランソワ・オゾンが、第50回目の節目の年となった2000年のベルリン国際映画祭のコンペティション部門で発表し、テディ賞長編映画部門大賞を受賞した作品だ。
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