九条さんはどのような高校時代を過ごされていたのでしょうか?
九条:僕は、「伴くん」みたいな生活していたなと…。
「伴くん」みたいな生活ですか?
九条:家には凄い金額の借金があったのですが、子どもだけはいい大学に行ってほしいという親の意向もあって、同級生が80人しかいない中高一貫の進学校で過ごしていました。でも僕はそこですごく不自由を感じて…。“勉強が正義だ”みたいな空気が嫌になってしまって、ちょっとずついじめられて、誰にも話されなくなってしまいました。本当に「伴くん」のようにずっと孤立をしていました。
ただ、「牧田」のような友達もいて。2人でずっとゲームしたり、公園で喋ったり。今はまだ「本田さん」のような人と結婚できていないですけれども、作品の中で「伴くん」が「本田さん」と出会って変わったように、お笑いを通して革命を起こしたいと思って突っ走っている最中なので、僕はまだ原作の中にいるような気がしています。
大橋さんって、誰かが絶対に感じたことあるとか、経験したことある部分をうまくオムニバスで入れてくださっているのですが、僕はそれがちょうど「伴くん」のような人生だったなと思います。そんな「伴くん」を役でいただいているので、僕は凄く嬉しかったし、楽しかったですね。
映画監督はもちろん俳優としては映画『シン・ウルトラマン』の主演を控え、さらには白黒写真家や劇場体験が難しい被災地や途上国の子供たちに映画を届ける移動映画館「cinema bird」の主宰などマルチに活躍する齊藤工。一方、九条ジョーは2020年「第41回ABCお笑いグランプリ」で優勝、2020年「M-1グランプリ」で準決勝進出するなどお笑いコンビ・コウテイとして活躍する傍ら、本作への出演や自身で執筆した随筆・短編小説をまとめた書籍『ボクノ聖書』を発表。1つのジャンルにとらわれずマルチに活動するふたりに原動力となるものについて伺った。
おふたりともあらゆる活動をされていらっしゃいますが、その原動力となるものは何でしょうか?
九条:僕は、お笑いだけがずっと好きで。高校で孤立をしていた時に、たまたまテレビで見たお笑いが凄く面白くて。こんなにも自由で好きなことをやって、お金がもらえる世界があるんだと思いましたし、それをきっかけに高校1、2年生のときにはお笑いの養成所に入ることを自分で決めていました。
ただ、映画に出たり、小説や随筆を書いたりっていう新しいことを始めたのは、自分を追い込みたいからなのかもしれません。知らない自分をどんどん見つけていきたいなっていう、謎のバイタリティがずっと自分の中にあって。それが、たまたま本に向いたり、映画出たり…それだけのことですね。
齊藤:僕は、誰かと作品を作ることを通じて、コミュニケーションを取っていたいからなのだということに最近気が付きました。他者と関わっていない時間が長く続くと、自分の確かめ方が、自分でしかできない。他者を介して自分を確認していたという感覚に近いです。
その根底にある想いとは?
齊藤:正直に言うと孤独なんだと思います。もちろん、本を読んだり、映画を見たり…映画も絶対に一人で見に行きますし、一人でいることも好きです。ただ、一人でいることが好きなくせに、たまにふと我に返って、孤独を感じることがあるんです。
一方で、比重としては自分のためだからではなく、誰かのためだからこそ動けるという方が大きい気がしています。プレゼントとかもそうですけど、貰うときよりも、その人を思って選んでいるときの方が、多幸感に溢れている。
今回の作品でも、原作に泥を塗らないようにとか色々思いますけれども、関わってくれる九条さんだったり、森さんだったりをとにかく素敵に、彼らに得がある時間・作品にしたいなと思っていました。作品のクオリティよりも人です。大橋先生に対しても、がっかりされないものを作りたい。人のリアクションとかを意識した方が、馬力が出るような気がするのです。
映画『ゾッキ』
公開時期:2021年4月2日(金)
※3月20日(土)より蒲郡市先行公開、3月26日(金)より愛知県先行公開(※一部劇場を除く)
監督:竹中直人、山田孝之、齊藤工
原作者:大橋裕之
脚本:倉持裕
出演者:吉岡里帆、鈴木福、満島真之介、柳ゆり菜、南沙良、安藤政信、ピエール瀧、森優作、九条ジョー(コウテイ)、木竜麻生、倖田來未、竹原ピストル、潤浩、松井玲奈、渡辺佑太朗 、石坂浩二(特別出演)、松田龍平、國村隼
製作:映画『ゾッキ』製作委員会
制作:and pictures、ポリゴンマジック
配給:イオンエンターテイメント
©映画『ゾッキ』製作委員会