展覧会「加藤翼 縄張りと島」が、東京オペラシティアートギャラリーにて、2021年7月17日(土)から9月20日(月)まで開催される。
1984年生まれの現代作家・加藤翼は、複数の参加者の協働作業から生まれる行為を、映像や写真などの作品として発表してきた。日本のみならず、アメリカ、メキシコ、マレーシア、香港など、世界各地でプロジェクトを展開しており、高い評価と注目を集めている。
加藤の代表作のひとつとして知られているのが、集まった人びとがロープと人力だけで巨大な構造体を引き倒したり、引き起こしたりする「Pull and Raise」シリーズだ。東日本大震災後、3.11を逆にした11月3日の文化の日に行われた《The Lighthouses - 11.3 PROJECT》では、約500人の人びとが福島に集まり、津波で壊された家々の瓦礫から灯台を模して作った構造体をロープで引き起こした。これが契機となって、震災からの復興を目指す地区の祭事へと発展したのだった。
初の大型個展となる展覧会「加藤翼 縄張りと島」では、《The Lighthouses - 11.3 PROJECT》をはじめ、代表作をほぼ網羅して展示。2007年以降の映像作品26点に、写真や模型などを加え、加藤の活動の足跡と全貌を紹介する。
たとえば《Underground Orchestra》で焦点を合わせるのは、リス科の小動物・プレーリードッグ。アメリカ・ノースダコダ州にあるスー族のスタンディングロック居留地で撮影された同作では、石油パイプライン建設によって棲みかを追われ、巣穴から頭を出すプレーリードッグの動きが、穴の出口に仕掛けられた鈴の音に変換される。ここでは、パイプラインの建設賛成・反対という立場を超えて、人間の傲慢さやその犠牲者へのまなざし、自然との共生の重要性が示されているといえる。
また、お互いを縛られた3人の演奏者が「君が代」を演奏する《2679》、“秘密”を紙に書いて投函してもらう進行中のプロジェクト「Superstring Secrets」、そして《Listen to the Same Wall》や《Woodstock 2017》なども出品される。
これらの作品からは、自然災害、都市開発、環境破壊などで地域のコミュニティが解体の危機と隣り合わせにあるなか、人びとが自発的に参画して協働作業を行う意義、そして分断や対立を超えた連帯による可能性にふれることができるだろう。
展覧会「加藤翼 縄張りと島」
会期:2021年7月17日(土)〜9月20日(月)
会場:東京オペラシティアートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
開館時間:11:00〜19:00(入場は18:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、8月1日(日・全館休館日)
入場料:一般 1,200円(1,000円)、大・高生 800円(600円)、中学生以下 無料
※同時開催「収蔵品展 071 寺田コレクションの日本画(タイトル未定)」、「project N 83 衣川明子」の入場料を含む
※( )内は各種割引料金
※団体受付・団体割引の実施は当面のあいだ休止
※障害者手帳の所持者および付添者1名は無料
※割引の併用および入場料の払い戻しは不可
※最新情報は美術館ウェブサイト、SNSおよび特設サイトにて随時告知
【問い合わせ先】
東京オペラシティアートギャラリー
TEL:050-5541-8600 (ハローダイヤル)