展覧会「ART-BOOK: 絵画性と複製性──MAU M&L貴重書コレクション × Lubokの試み」が、東京の武蔵野美術大学 美術館・図書館にて、2021年10月4日(月)から11月14日(日)まで開催される。
「ART-BOOK: 絵画性と複製性──MAU M&L貴重書コレクション × Lubokの試み」は、書物における版画に焦点を合わせた展覧会だ。同館が所蔵する貴重書コレクションを体系的に展観するとともに、現代の版表現の可能性を拡張するライプツィヒの出版社「ルボーク・フェアラーグ(Lubok Verlag)」の活動を紹介し、版画という表現媒体の視点から書物における「絵画性」をひもとく。
書物の歴史のなかで、版画は視覚的表現の重要な役割を担ってきた。活版印刷術が発明されて書物の複製が容易になると、それまで人の手で書き写されていた挿絵や図版も版画によって複製され、その時々の社会的背景や技術の発展と結びつきつつ、多彩な展開を遂げた。
第一部では、同館の貴重書コレクションから、版画による挿絵や図版表現の優れた書物を厳選して、3章構成で紹介。絵画と複製の関係性にも着目しつつ、版画という表現媒体に固有の技法と表現を再考する。
第一章では、15世紀後半から16世紀の書物に見られる挿絵や図版を紹介。この頃の主要な技法である板目木版は、表現上の制約を受けやすい反面、版刻の容易さや活字組版と同時に印刷ができる利便性から多用された。ここでは、素朴ながらも味わい深い挿絵や、内容の補足を目的とする図版を目にすることができる。
第二章では、17世紀から19世紀の書物における図版の再現性に着目。この時代には、エングレービングやエッチング、リトグラフなど、さまざまな版画技法が登場し、彫版や印刷の技術が劇的に発展した。会場では、現実の事物や絵画そのものと見紛うほどに精緻な図版表現を紹介する。
第三章では、19世紀後半から20世紀半ばにかけて起こった版画の変容を再考。写真複製技術が浸透したこの時代、従来の版画技法を用いた挿絵や図版は影を潜める一方、芸術家の思考を直接的に表現する手段として、書物や版画が着目されるようになる。本章では、絵画性を強調した版表現や書物の装幀など、版画が有する可能性を探る試みを紹介する。
第二部では、ドイツ・ライプツィヒの出版社「ルボーク・フェアラーグ」の活動を、主宰者であるクリストフ・ルックへバーレの作品群とともに紹介。ルックへバーレは、床材に使用されるリノリウムを版に用いたアートブックを手がける一方、アーティストとしては絵画を中心に、版画や立体作品、インスタレーションなどの幅広い形式で表現を展開している。本展では、領野横断的な版表現を通して、広くグラフィックアーツとして版画がもつ可能性を紹介する。
展覧会「ART-BOOK: 絵画性と複製性──MAU M&L貴重書コレクション × Lubokの試み」
会期:2021年10月4日(月)〜11月14日(日)
※当初は2021年9月6日(月)〜10月2日(土)、10月18日(月)〜11月13日(土)の会期を予定していたが変更
会場:武蔵野美術大学 美術館展示室1・2、アトリウム1・2
住所:東京都小平市小川町1-736
開館時間:10:00〜18:00(土曜日・特別開館日は17:00閉館)
休館日:日曜日・祝日(10月31日(日)は特別開館日)
入館料:無料
※会期などは変更となる場合あり(最新情報はウェブサイトにて確認)
※完全予約制(詳細は決まり次第ウェブサイトにて告知、学内(学生・教職員)は予約不要)
【問い合わせ先】
武蔵野美術大学 美術館・図書館
TEL:042-342-6003