京都市京セラ美術館では、開館1周年記念展「森村泰昌:ワタシの迷宮劇場」を、2022年3月12日(土)から6月5日(日)まで開催する。
現代美術におけるセルフポートレートの先駆者のひとりである森村泰昌は、美術史の名画やファッション雑誌の登場人物、歴史上の人物、あるいは女優に扮して撮影されたポートレート作品を制作してきた。そこでは、ジェンダーや国籍、年齢までもが曖昧となり、個人のアイデンティティの多層性や流動性、さまざまな欲望が表現されている。
「森村泰昌:ワタシの迷宮劇場」は、京都での開催としては1998年以来の大規模個展。1985年から撮りためている秘蔵のインスタント写真約500点を初公開するとともに、1994年に森村が自作の小説を自ら朗読したCD《顔》の音源に基づく「声」の空間を展開し、35年あまりにわたって継続されてきた私的な世界の全貌を初めて紹介する。
本展では、森村が1985年から撮りためている秘蔵のインスタント写真を、約500点というボリュームで初公開。森村にとってインスタント写真とは、アトリエなどの私的な空間で執り行われる儀式の痕跡のようなものだといえる。会場では、これまでに撮影されてきたこれらの写真を一挙に展観することで、森村作品の根幹ともいえるバックグラウンドの全貌に光をあてる。
森村は1994年に、自作の小説を自ら朗読して、CD《顔》を制作した。本展では、架空の京都の尼寺を舞台に繰り広げられるこの物語を、展示室内に特設の音響空間を設えることで、朗読劇として再制作。近年、精力的に舞台に取り組む森村による、セルフポートレートとしての「声」の空間を楽しむことができる。
さまざまな人格に変身することで自己を解体し、個人がもつ複数の顔を露わにする森村のセルフポートレートは、スマートフォンの進化やSNSの浸透によって身近になった「自撮り」と共通しつつも、決定的に異なる面を持つ。そこには、自己への透徹したまなざしと、ひとりの人間が複数の存在として生きてゆくことに対する肯定を見て取ることができるのだ。本展では、あらためて自身の制作の原点に立ち返ることでこれからを模索する、森村の現在の姿を見ることもできるだろう。
京都市京セラ美術館開館1周年記念展「森村泰昌:ワタシの迷宮劇場」
会期:2022年3月12日(土)〜6月5日(日)
会場:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124
開館時間:10:00〜18:00(最終入場は17:30)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
料金:一般 2,000円(1,800円)、大学・高校生 1,600円(1,400円)、小中学生 800円(600円)、未就学児 無料
※( )内は前売・20名以上の団体料金
※前売券は、2021年11月19日(金)より、美術館ウェブサイトにて販売予定
※e-tixからの購入で各当日料金から100円引き
※京都市内に在住・通学の小中学生は無料
※障害者手帳などの提示者は、本人および介護者1名無料(確認できるものを持参のこと)
【問い合わせ先】
京都市京セラ美術館
TEL:075-771-4334