お2人が演じた兼高と室岡は相性98%のバディですが、今回実際に共演されてみて、お互いの印象はいかがでしたか?
岡田:坂口さんはアクションをやっていても楽しそうに取り組まれていましたし、僕が「今の良かったよ!」って親指を上げるとものすごく喜んでくれる……(笑)。そういうまっすぐさやかわいさ、魅力がパートナーとしてはやりやすかったですね。僕の演じた兼高が、組織に潜入して素性を隠している役柄だったので、そういう“内に秘めた”キャラクターを演じる上でも助けてもらった感じがあります。
坂口:岡田さんからは強い男性像を感じることもあれば、愛くるしさを感じることもあり、人としての魅力にあふれた方。僕はもう完全に岡田さんに頼っていました。アクションに向きあう中でも色々なことを教えていただきましたし、アクションが一発うまくいった時に岡田さんからグーサインを頂くとすごくうれしかった。一緒に身体を動かす中で岡田さんとの信頼関係ができていくのはとても心地良くて、物語上では大変なこともありつつ、それを超えた兄と弟のような感覚でやらせてもらっていたな、と思います。
劇中にも兼高と室岡がトレーニングするシーンがありますよね?
坂口:僕のクランクインがまさにそのシーンから。色々な技をかけ合ったり、追いかけっこしたり、どれだけ室岡が兼高とのバディを楽しんでいるのかを表現することが、物語の展開に効いてくると思いました。僕が岡田さんからグーサインをもらって嬉しかったように、室岡も兼高に対して多分そうだと思うんですよね。そういうところに“室岡”という役と自分が共鳴するような感じがあったから、室岡の振り切った行動も違和感なく演じることができたのかな、とも思います。
岡田さんはアクションシーンの技闘デザイン(アクション振り付け)も『ヘルドッグス』で担当されていますね。
岡田:監督が求めるのは、お芝居の延長線上でのアクション。ですから、お芝居とアクションの境目なくキャラクターが立つような構成を意識しました。動きの中に映像的なギミックを入れたり、キャラクターの個性やそのキャラクターの行動の狙いにあった動きを考えて提案しています。
兼高、室岡のアクションが大きな見所となっていますが、具体的にどのようにしてアクションをつけていったのでしょうか。
岡田:兼高と室岡のバディ感を出すために、アクションを作る上でもコンビネーションを大事にしつつ、どうやって室岡のキャラクターを出しながらアクションを構築できるか、室岡の動きをまず考えました。
兼高と室岡はできるだけ“表と裏“というか、“陰と陽”というか……、本人達は意識していないけれどコンビネーションが自然と作れるような動きにしたかった。室岡はとても頭がいいキャラクターなので、例えば兼高が前に出ていったら後ろから刺したり、滑り込んで蹴ったり、動きを予測して兼高の穴をカバーしてくれるようなアクションを室岡にはつけています。兼高が突っかかりにいったら室岡がなんとなく自分の立ち回りを察して少し下がるような感じですね。
坂口さんは、僕が動きの意図を説明すると、いつも笑顔でもの凄く頑張ってくださるんですよ。「僕がこっちに動くね」と言えば、「じゃあ僕はこう動きます」と、どう動けばいいのか瞬時に判断してくれるので、坂口さんが室岡で本当に良かったです。
坂口:アクションシーンを演じている時は、アドリブみたいに瞬間的に動く時もありつつ、それが結果的にはちゃんと計算された動きになっているような感覚がありました。岡田さんに“動かしてもらった”部分もあるし、兼高と室岡の関係性が見えてくるアクションだったり、警護対象がいる時のアクションだったり、それぞれの動きに必然性があって変な嘘がなかったなと感じています。
アクションをこなしながら瞬時に動き方を判断していくのは大変だったのでは?
坂口:現場を想定して、撮影前からアクションチームとトレーニングはしていました。ですが、いざ撮影に入ると想定外のことも求められる。原田監督や岡田さんが現場で色づけしていく中で瞬間的にどう動くのか、対応力が必要でした。思いもよらないことがあっても瞬時に反応して、アンテナを敏感に保つ作業は中々大変ではありましたが、その大変さも心地良かったです。“楽しく転がされてみよう“と思ってやっていました。
ちなみに、『ヘルドッグス』の撮影が終わってから他の現場でアクションシーンを撮る時に、周りの方から「わかってるね!」と褒められたことがあって。『ヘルドッグス』での岡田さんとのアクションで培ったものが大きいと思います。
岡田:ありがとうございます(笑)!
かつて警官だった出月梧郎(岡田准一)は、管内で起きた強盗殺人事件によって愛する人を失ってしまう。警官でありながらも彼女を守ることができなかったことを悔やみ、自ら犯人に復讐することを決意する。1人、また1人、実行に移していく。強盗殺人事件の首謀者マッド・ドックを闇に葬った直後、警視庁組織犯罪対策部特別捜査隊・班長の阿内(酒向芳)に捕らわれる。阿内の目的は、出月を関東最大の広域暴力団・東鞘会に潜入させること。出月の歪んだヒーロー願望、心の闇、圧倒的な強さと狂犬っぷりは、他に類を見ないほど潜入捜査に適任者だった。
弱みに付け込まれた出月は、その日から兼高昭吾として第二の人生を歩き出すことになる。最初のミッションは、ヘル・ドッグスの一員になることだった。ヘル・ドッグスとは東鞘会七代目会長・十朱(MIYAVI)が率いる最強の精鋭部隊。メンバーのなかで一番危険なサイコパスだという室岡(坂口健太郎)に喧嘩を売り、ヘル・ドッグスの一員になることが阿内のもくろみだ。事前に警察が調査した兼高と室岡の相性は98%だった。
一年後。相性抜群の兼高と室岡は、お互いになくてはならない存在となり、東鞘会神津組内で着々と力をつけていた。ある日、神津組組長・土岐(北村一輝)の推薦で、兼高と室岡は十朱会長の警護任務を勝ち取る。土岐から絶大な信頼を得ている一方で、彼の愛人・恵美裏(松岡茉優)との関係を続けていることを気にかけながらも、着実に東鞘会の心臓部に近づいていく兼高。組織の人間に怪しまれないよう、阿内との連絡はリラクゼーションサロンに勤めるマッサージ師・典子(大竹しのぶ)を通して行っていた。
やがて完璧だったはずの兼高の潜入生活に綻びが出はじめる。兼高が警察の犬かもしれないと勘づいたのは、前から兼高の存在が目障りだった神津組若頭の三神(金田哲)だった。室岡は兼高の噂が本当かどうか確かめようとしていた。その頃、兼高は阿内から最後のミッションを課せられる。それは会長である十朱を殺し、速やかに極秘ファイルを奪うことだった。信頼、裏切り、愛情、因縁……そして次から次へと明らかになる新事実。兼高と室岡の二人は、予測不能なラストを迎えることになる。
公開日:2022年9月16日(金)
出演:岡田准一、坂口健太郎、松岡茉優、MIYAVI、北村一輝、大竹しのぶ、⾦⽥哲、⽊⻯⿇⽣、中島亜梨沙、杏⼦、⼤場泰正、吉原光夫、尾上右近、⽥中美央、村上淳、酒向芳
監督:原田眞人
脚本:原田眞人
原作:深町秋生「ヘルドッグス 地獄の犬たち」(角川文庫/KADOKAWA刊)
配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
※PG12