企画展「ケアリング/マザーフッド:『母』から『他者』のケアを考える現代美術 ─いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?─」が、茨城の水戸芸術館現代美術ギャラリーにて、2023年2月18日(土)から5月7日(日)まで開催される。
人びとは誰しも、日々の生活や人生のさまざまな場面でケアをされ、ケアをする機会を持つ。自分以外に関心を向け、世話をするといったケアに関わる活動は、人間社会を支える実践だといえる。しかし、生産性や合理性を追求する近代社会において、ケアの役割とその担い手の存在は長らく周縁化されてきた。すなわち、ケアに関わる活動は誰もが必要とするものであるからこそ、「誰か」が担うべき仕事として自然に捉えられ、不可視化され、そして自己責任化されてきたのだ。
企画展「ケアリング/マザーフッド:『母』から『他者』のケアを考える現代美術 ─いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?─」では、同時代を生きる15のアーティストの作品を通して、社会とケア、そしてその担い手の関係を解きほぐし、ケアを「ひとり」から「つながり」へと編みなおすことを試みる。
本展の起点となるのが、「ケアをする行為」を指す「ケアリング(caring)」と、「母親である状態」を意味する「マザーフッド(motherhood)」という言葉を解きほぐすことだ。このふたつの言葉は、長く結びつけて捉えられてきている。しかしケアは、母子関係や家庭内労働に限定されない行為として、誰もが関わる行為である。にもかかわらず、家父長的な社会構造などにおいて、ケアの労働とその担い手は、その価値を看過され、不可視化されてきた。本展では、ケアを担う人もひとりの人間として捉えなおすとともに、人がケアの責任を負う具体的な状態を受けいれる社会のあり方にも光をあて、ケアの多元性を開いてゆく。
こうした関心のもと、本展では、1960〜70年代における第2波フェミニズムを背景に生まれた表現から現代の作品に至るまで、ケアにまつわるアーティストの表現に着目。第2波フェミニズムの動きから生まれた作品からは、ケアに関わる行為を家庭内に抑圧することに意義を唱えたマーサ・ロスラーやミエレル・レーダーマン・ユケレスの初期作品を展示するとともに、日本からは出光真子を紹介する。
また、「女性特有の痛みはなぜなくならないのか?」という問いを起点に、妊娠・出産をする身体と、社会や習慣によって植えつけられる痛みの関係を考察する本間メイや、「育児日記」を再読することで、大きな主語では括りきれないひとりの人間の記録へと編みなおすAHA!などの作品を紹介。さらに、石内都が「同性の人間の一人として客観的な距離をもって」亡き母と向き合うためその遺品にカメラを向けた《motherʼs》なども展示する。
企画展「ケアリング/マザーフッド:『母』から『他者』のケアを考える現代美術 ─いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?─」
会期:2023年2月18日(土)〜5月7日(日)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
住所:茨城県水戸市五軒町1-6-8
開館時間:10:00〜18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜日
入場料:一般 900円、団体(20名以上) 700円
※高校生以下、70歳以上、障害者手帳などの所持者および付添者1名は無料(学生証や年齢のわかる身分証明書を提示)
※学生証の所持者と65〜69歳は、毎月第一金曜日(3月3日、4月7日、5月5日)に100円で入場可
■出品作家
青木陵子、AHA!、石内都、出光真子、碓井ゆい、ラグナル・キャルタンソン、二藤建人、マリア・ファーラ、リーゼル・ブリッシュ、ホン・ヨンイン、本間メイ、ヨアンナ・ライコフスカ、マーサ・ロスラー、ミエレル・レーダーマン・ユケレス、ユン・ソクナム
【問い合わせ先】
水戸芸術館(代表)
TEL:029-227-8111