展覧会「エドワード・ゴーリーを巡る旅」が、東京の渋谷区立松濤美術館にて、2023年4月8日(土)から6月11日(日)まで開催される。その後、千葉の佐倉市立美術館、神奈川の横須賀美術館、奈良県立美術館などに巡回する。
エドワード・ゴーリー(Edward Gorey)は、20世紀後半に活躍したアメリカの絵本作家だ。19世紀のイギリス文学を彷彿とさせる重厚で独特の世界観、モノクロームの緻密な線描、そして韻を踏んだ詩的な文章による絵本を数多く残しており、近年、日本でも『うろんな客』や『不幸な子供』などの作品が紹介されている。また、文学やバレエ、映画も愛好し、挿絵や演劇のポスター、舞台美術も手がけた。
展覧会「エドワード・ゴーリーを巡る旅」は、ボストン近郊にあるゴーリーの記念館「ゴーリーハウス」で開催されてきた企画展を、「子供」や「不思議な生き物」、「舞台芸術」などのテーマを軸に再構成するもの。約250点の作品を通して、ゴーリーの活動を紹介する。
ゴーリーは、『不幸な子供』をはじめ、幼児や子供が主人公となる本を数多く手がけている。これらの作品では、悪い子には報いがあると説くヴィクトリア時代の教訓的な物語をなぞるかのように、子供たちに悲劇や試練が降りかかる。しかし、従来の童話とは異なり、ストーリーは安直なハッピーエンドを迎えることも、勧善懲悪的な展開を見せることもなく、良い子も悪い子も等しく死や不幸を迎えることになるのだ。
このような冷酷な死生観は、ゴーリーの子供時代と関係があると考えられる。ゴーリーは幼い頃、20世紀アメリカの不自由ない平凡な日常生活を送っているようでありながら、実際には決して平坦ではない家庭や世界のなかで成長したのだった。本展では、ゴーリー自身の幼少期の作品にも光をあてつつ、子供をテーマとした作品を紹介する。
架空の生き物もまた、ゴーリーの作品の大きな特徴のひとつだ。たとえば『うろんな客』では、ある日突然、奇妙な生き物がとある家に入り込み、困ったことばかりをしつつ家庭に居座り続ける。黒い体に長い鼻、足にはスニーカーというその姿は、読み手に強い印象を与えることだろう。会場では、一見不気味な様相ながら、ユーモラスで愛嬌のある不思議な生き物に着目し、絵本の原画、キャラクター設定のための鉛筆のスケッチやドローイングを展示する。
ゴーリーは、舞台芸術とも関わりが深い。20代の終わりにニューヨークに移住したゴーリーは、ニューヨーク・シティバレエ公演に通いつめ、振付師ジョージ・バランシンを敬愛。1957年頃からはバランシンの振付による公演をほぼすべて観たとされ、バレエを主題とした絵本も手がけている。また、1970年代には、ミュージカル劇『ドラキュラ』の舞台美術に携わり、演劇界での最高の栄誉のひとつとされるトニー賞の衣装デザイン賞を受賞している。本展では、ゴーリーと舞台美術、映画やテレビとの関係にも光をあてる。
展覧会「エドワード・ゴーリーを巡る旅」
会期:2023年4月8日(土)~6月11日(日) 会期中に一部展示替えあり
会場:渋谷区立松濤美術館
住所:東京都渋谷区松濤2-14-14
開館時間:10:00〜18:00(金曜日は20:00まで)
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日
入館料:一般 1,000円(800円)、大学生 800円(640円)、高校生・60歳以上 500円(400円)、小・中学生 100円(80円)
※( )内は団体10名以上および渋谷区民の入館料
※土・日曜日、祝休日は小・中学生無料
※毎週金曜日は渋谷区民無料
※障がい者および付添者1名は無料
※リピーター割引:観覧日翌日以降の本展会期中、有料の入館券の半券と引き換えに、通常料金から2割引で入館可(1枚の入館券につき1回まで有効)
■巡回情報
・佐倉会場
会期:2024年4月20日(土)~6月23日(日)
会場:佐倉市立美術館(千葉県佐倉市新町210)
・横須賀会場
会期:2024年7月6日(土)〜9月1日(日)
会場:横須賀美術館(神奈川県横須賀市鴨居4-1)
・奈良会場
会期:2024年9月14日(土)~11月10日(日)
会場:奈良県立美術館(奈良県奈良市登大路町10-6)
・名古屋会場
会期:2025年3月1日(土)〜4月6日(日)
会場:松坂屋美術館(愛知県名古屋市中区栄3-16-1 名古屋松坂屋南館 7F)
・香川会場
会期:2025年4月12日(土)〜6月8日(日)
会場:高松市美術館(香川県高松市紺屋町10-4)
【問い合わせ先】
渋谷区立松濤美術館
TEL:03-3465-9421