企画展「没後50年 福田平八郎」が、大阪中之島美術館にて、2024年5月6日(月・振)まで開催される。その後、大分県立美術館に巡回する。
福田平八郎(ふくだ へいはちろう)は、大正時代から昭和時代にかけて京都で活躍した日本画家だ。色や形、視点、構成に工夫を凝らし、色鮮やかで洗練された作品を手がけており、なかでも、湖面の細波を簡潔な構成で描いた《漣》(重要文化財)は、日本画の装飾性と自然観察に基づく写実を融合した傑作として知られている。
企画展「没後50年 福田平八郎」は、関西では17年ぶり、大阪の美術館では初となる平八郎の回顧展。《漣》や《竹》、《雨》などの代表作を筆頭に、初期から晩年にいたる作品120件以上を一堂に集め、平八郎の画業を紹介する。また、《漣》に代表される、水の表現に着目した特集展示なども行う。
明治25年(1892年)大分に生まれた平八郎は、18歳の時、苦手の数学で留年が決まったことから、画家を志して京都に出た。初期の作品は、技術力の高さを示す一方、創作に向けた熱心な研究の結果、ほかの画家の描き方に倣ったものとなっている。そこで平八郎は、自然をよく観察して描くという客観的な見方の追求を始めることになった。
平八郎は次第に、入念な観察と写生に重きを置いた表現で評価されるようになり、京都画壇で注目を集めていった。大正8年(1919年)の帝展で《雪》が初入選を果たし、翌年に《安石榴》が入選、さらに大正10年には《鯉》が特選となり、宮内庁買上げとなったのだ。さらに、大正15年の《朝顔》では、古典的な様式から脱却し、写実に基づいた新たな表現様式が試みられている。本展の前半では、《安石榴》や《朝顔》など、自らの表現を確立しつつあった時期の作品を紹介する。
写生を追求するなか、平八郎は花や鳥の細部にまで目を向けるようになるものの、昭和3年(1928年)、中国旅行で「自然の大花鳥」に接したことから、全体の雰囲気や自然のいきいきとした生命感を表現することの重要性に気付いた。こうして平八郎は、色彩を追求することで対象の形を捉えるようになる。会場の中盤では、写生を基本とした装飾画へと発展してゆくこの時期の平八郎に着目し、《花菖蒲》や《竹》などを展示する。
本展の終盤では、平八郎ならではの斬新な発想で手がけられた作品に着目。平八郎は、人々が日常で目にしているものを、誰もが見たことのない視点で切り取り、これまでにない構図で作品を手がけた。たとえば《雨》では、瓦屋根を大胆なクローズアップとトリミングで捉えている。また、青い空に白い雲が湧き上がる《雲》では、濃淡や陰影を抑えるなど、写生に基づきつつ要素を極限まで削ぎ落とした表現を目にすることができる。
企画展「没後50年 福田平八郎」
会期:2024年3月9日(土)〜5月6日(月・振) 会期中に展示替えあり
会場:大阪中之島美術館 4階展示室
住所:大阪府大阪市北区中之島4-3-1
開館時間:10:00〜18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜日(4月1日(月)・15日(月)・22日(月)・29日(月・祝)、5月6日(月・振)は開館)
観覧料:一般 1,800円(1,600円)、高・大学生 1,000円(800円)、中学生以下 無料
※障がい者手帳などの所持者および介護者1名は、当日料金の半額(要証明)
※《漣》(重要文化財)は、4月9日(火)から23日(火)までの期間、作品保護のため展示を一時中止
■巡回情報
・大分会場
会期:2024年5月18日(土)〜7月15日(月・祝)
会場:大分県立美術館(大分県大分市寿町2-1)
【問い合わせ先】
大阪市総合コールセンター
TEL:06-4301-7285(受付時間 8:00〜21:00 / 年中無休)