展覧会「フェルメール展」が、2019年5月12日(日)まで大阪市立美術館にて開催される。また、4月27日(土)から5月12日(土)までの期間は、開館時間を1時間早め、朝8:30より開館する。
「フェルメール展」は、オランダ絵画黄金時代の巨匠で“光の魔術師”とも称される、ヨハネス・フェルメールの作品が日本美術展史上最多点数集まる展覧会。寡作の画家として知られるフェルメールの現存作品はわずか35点ともいわれている中で、大阪展には、西日本過去最大規模となる、日本初公開作品を含む6点のフェルメール作品を展示する。
部屋の手前から中を覗き込むようにして描かれた《恋文》は、大阪展のみで展示される注目作品。手紙を受け取る女主人は楽器を抱え、周りにはスリッパや箒が放り出されている。寓意的に配置されたモチーフが、彼女が恋にうつつを抜かしていることを暗示。2人の人物の表情も細やかに描かれており、物語性と構図の秀逸さが際立つ作品だ。
入口から続く広々とした空間には、フェルメール(1632~75年)とほぼ同時代を生きた画家たちが描く作品群約40点が展示されている。
作品として選ばれたのは、ハブリエル・メツーやヘリット・ダウ、ヤン・ステーン、ピーテル・デ・ホーホといった画家達たちが描く肖像画や、宗教画、当時の人々の生活を映し出した風俗画など。時代を感じさせない鮮やかな色彩の絵画からは、その時代を生きた人々の文化や風習を垣間見ることができる。
そして会場の一番奥へと辿り着くと、待ち構えているのが、目玉となる「フェルメール・ルーム」だ。この部屋には、8点のフェルメール作品が集結。初期から晩年にかけてまでの作品群を一堂に集結させた、貴重な展示室となっている。
アムステルダム国立美術館所蔵の《牛乳を注ぐ女》は、女性が牛乳を注ぐのに没頭している、日常の一面を切り取った作品。部屋に差し込む、細かい粒子で構成される光が女性や部屋にある物を照らし、彫像のように立ち尽くす様を陰影や深みのある色彩で描き出している。
《真珠の首飾りの女》は、静かな部屋の中で身支度を整え、真珠の首飾りを結ぼうと鏡に向かう女性を描いた作品。机の上には白粉をはたくブラシや銀色の器が並び、光に照らされる白い壁を中心に据えるなど、斬新な構図から画家の空間表現へのこだわりが感じられる。
日本初公開となる《ワイングラス》は、ワインを飲む女性と黒い帽子の男性を描いた作品だ。楽譜や古楽器のリュートが置かれた“愛”を暗示する室内に、“節制”を連想させる、馬具を持った女性の柄のステンドグラスと、室内での色恋沙汰を戒める意味合いを、絵画の中のモチーフに持たせている。繊細なタッチと絶妙な配色で、真っ赤な帽子をかぶった女性を印象的に描いた《赤い帽子の娘》もまた日本初公開作品で、東京展のみ12月20日(木)まで展示される。
《取り持ち女》もまた、日本初公開作品。それまで宗教画や物語画に取り組んでいたフェルメールが初めて描いた風俗画には、女性が客から金貨を受け取ろうとする瞬間が描かれている。女性を明るく照らす光、表情、手の動きなどフェルメール作品の特徴が垣間見える初期作品だ。なお、大阪展では通期で展示される。