展覧会「佐藤雅晴 尾行─存在の不在/不在の存在」が、茨城の水戸芸術館現代美術ギャラリーにて、2021年11月13日(土)から2022年1月30日(日)まで開催される。
佐藤雅晴は、日常風景をビデオカメラなどで撮影し、パソコン上でペンツールを使用して慎重にトレースする「ロトスコープ」の技術によって映像作品を手がけてきた。その作品には、目の前に映る事物の実在感とともに、不確かさや儚さといった非現実性をも観る者に感じさせる独特の世界が広がっている。佐藤は国内外で精力的に作品を発表して高い評価を受けてきたものの、2019年、45歳でこの世を去った。
展覧会「佐藤雅晴 尾行─存在の不在/不在の存在」は、過去最大規模となる佐藤の回顧展。1999年に渡独して初めて制作した映像作品《I touch Dream #1》から、死の直前まで描き続きた「死神先生」シリーズまで、映像作品や平面作品をあわせて62点展示し、その活動を振り返る。
大分出身の佐藤は、1999年に渡独し、デュッセルドルフを拠点に10年あまり活動。2010年に日本に帰国して茨城県取手市に居を構えたのち、癌の発見や東日本大地震の被災など、さまざまな出来事に見舞われつつも、国内外で広く作品を発表した。
本展では、現存する佐藤の映像作品をすべて展示。《I touch Dream #1》から、東京五輪に向けて変わりゆく東京を題材にした代表作《東京尾行》、そして東日本大震災と原発事故後の福島の現状を記録に残すべく、晩年に手がけるも未完のまま残された《福島尾行》まで、全26作品を60以上のスクリーンとモニターで展示する。
また、会場では、未発表であった映像作品《SM》も初公開。2015年に制作された同作では、頭部のない下着1枚の男性が、自らの首をつかんで襖に打ちつける光景を延々と繰り返される。その姿からは、《東京尾行》を制作するさなかにあった佐藤が感じていたであろう、思うようにはならない自身の身体に対するもどかしさや、制作へ焦燥感を見て取ることができる。
佐藤は2018年9月に余命宣告を受けたのち、病状の進行に伴う視力の低下などによって映像を手がけることが難しくなったものの、アクリル絵具による平面作品を精力的に制作し続けた。そして、老朽化による取り壊しが予定されていた自宅で静かに過ごすなか、身近にある親しみのある光景の一瞬を切り取り、パネル上に原寸大の絵としてトレースしたのが、「死神先生」シリーズであった。本展では、佐藤が最後に過ごした自宅を再現するかのような展示室内で、「死神先生」を展示する。
展覧会「佐藤雅晴 尾行─存在の不在/不在の存在」
会期:2021年11月13日(土)〜2022年1月30日(日)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
住所:茨城県水戸市五軒町1-6-8
開館時間:10:00〜18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜日(1月10日(月・祝)は開館)、1月11日(火)、年末年始(2021年12月27日(月)〜2022年1月3日(月))
入場料:一般 900円、団体(20名以上) 700円
※高校生以下/70歳以上、障害者手帳などの所持者と付添者1名は無料(学生証、年齢のわかる身分証明書が必要)
※学生とシニアための特別割引デー「First Friday」:学生証の所持者と65〜69歳は、毎月第一金曜日(12月3日、1月7日)に100円で観覧可
■終了した会場
・大分県立美術館
会期:2021年5月15日(土)~6月27日(日)
住所:大分県大分市寿町2-1
【問い合わせ先】
水戸芸術館(代表)
TEL:029-227-8111