展覧会「めぐるアール・ヌーヴォー展 モードのなかの日本工芸とデザイン」が、金沢の国立工芸館にて、2021年12月25日(土)から2022年3月21日(月・祝)まで開催される。
19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパで流行したアール・ヌーヴォーは、植物などの有機的なモチーフに由来する曲線を多用した、優美な装飾性を特徴とする様式だ。その誕生に影響を与えたのは日本の美術であったが、一方で明治期の日本が西洋の美術を摂取するようになったとき、多くの美術家がアール・ヌーヴォーを最先端の美術として受容し、そこに日本美術自らの姿を見出すことになった。
展覧会「めぐるアール・ヌーヴォー展 モードのなかの日本工芸とデザイン」では、日本と西洋の異なる文化のあいだをめぐる、美術の「還流」に着目。日本美術の影響から生まれたジャポニスムからアール・ヌーヴォーに至るヨーロッパの装飾芸術の流れ、そしてアール・ヌーヴォーを受容した日本美術を、代表的な作家の作品により概観する。さらに、アール・ヌーヴォーの源泉となった日本美術に通底する自然へのまなざしが現代にまで継承される様相を、多彩な作品とともにたどる。
19世紀後半、日本から浮世絵や工芸品がもたらされたことなどにより、ヨーロッパ各国ではジャポニスムが流行した。それは単なる異国趣味にとどまらず、造形表現にも新しい視点をもたらすものであり、アール・ヌーヴォーもそうした中で育まれたのだった。第1章では、日本美術の影響とアール・ヌーヴォーの誕生に着目。アンリ・ヴァン・ド・ヴェルド、アルフォンス・ミュシャ、エミール・ガレ、ルネ・ラリックといった代表的な作家を紹介するとともに、こうした流行に素早く反応したことがうかがえる、初代宮川香山ら同時代の作品も展示する。
1900年前後の日本の画家や図案家は、雑誌などの印刷メディアを通して、あるいはパリの街中や博覧会場の様子を見聞きすることで、アール・ヌーヴォーと出会った。第2章ではその例として、日本のアール・ヌーヴォー受容で重要な位置を占める杉浦非水、そしてアール・ヌーヴォー全盛期にヨーロッパに滞在した浅井忠と神坂雪佳などを取り上げ、日本の図案家や工芸家がアール・ヌーヴォーに何を見出し、何を採り入れ、そして何を目指したのかを探る。
ジャポニスムの立役者のひとりであるジークフリート・ビングは、自然こそ日本美術の霊感の源であると、その美点を賞賛した。一方で、日本の工芸に眼を向けると、身近な草花や小さな虫にまで注がれるまなざしは、ジャポニスムやアール・ヌーヴォーの時代に限られるものではないことがわかる。日本の装飾芸術の特質である自然に寄り添う姿勢を、板谷波山や森口華弘ら工芸家のさまざまな作品から紹介する。
展覧会「めぐるアール・ヌーヴォー展 モードのなかの日本工芸とデザイン」
会期:2021年12月25日(土)〜2022年3月21日(月・祝) 会期中に一部展示替えを実施
[前期 2021年12月25日(土)〜2022年2月6日(日) / 後期 2022年2月8日(火)〜3月21日(月・祝)]
会場:国立工芸館
住所:石川県金沢市出羽町3-2
開館時間:9:30〜17:30(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(1月10日(月・祝)、3月21日(月・祝)は開館)、年末年始(12月27日(月)〜1月1日(土・祝))、1月11日(火)
観覧料:一般 300円(250円)、大学生 150円(70円)
※( )内は20名以上の団体料金および割引料金
※高校生以下および18歳未満、65歳以上は無料
※そのほかの無料対象および割引対象については、美術館ホームページを参照
※オンラインによる事前予約(日時指定・定員制)を導入(詳細については美術館ホームページを確認のこと)
※若干数、当日券も用意
【問い合わせ先】
TEL:050-5541-8600 (ハローダイヤル)