展覧会「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」が、東京・六本木の国立新美術館にて、2022年8月10日(水)から11月7日(月)まで開催される。その後、兵庫県立美術館に巡回予定だ。
李禹煥(リ・ウファン)は、日本の美術動向「もの派」を代表する作家として、国際的にも注目されてきた現代美術家だ。芸術をイメージや主題、意味の世界から解放し、ものともの、ものと人の関係性を問いかける李の作品は、世界のあらゆるものがともに存在し、互いに関連しあっていることを示している。
1936年、韓国の慶尚南道に生まれ、1956年に来日した李は、洋の東西を問わずさまざまな思想や文学を学んだ。そして、1960年代に現代美術への関心を深め、60年代後半になると本格的に制作を開始。視覚の不確かさを乗り越えようと試み、自然や人工の素材をほとんど加工せずに組み合わせて提示する「もの派」を牽引した。また、すべては相互関係のもとにあるという考えを、視覚芸術とともに著述でも展開している。
東京初となる李の大規模回顧展「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」では、彫刻と絵画の展開の過程を時系列的に紹介。視覚の問題を扱った初期の代表作《風景I》《風景II》《風景III》から、彫刻の概念を更新した〈関係項〉シリーズ、そして静謐な絵画など、代表作を一挙に展示するほか、新作も公開される予定だ。
1968年頃から制作された〈関係項〉は、主に石、鉄やガラスを素材に、ほとんど手を加えずに組み合わせた立体作品のシリーズだ。李は、観念や意味よりも、ものと場所、ものと空間、ものともの、ものとイメージの関係に着目してこれらの作品を手がけており、1990年代以降には、ものの力学や環境に対する意識のもと、石の形と鉄の形が関わりあう作品も制作している。また、本展では、屋外展示場でアーチ状の野外彫刻の新作も公開予定となっている。
一方で李は、1970年にニューヨーク近代美術館で開催されたバーネット・ニューマンの個展に触発され、幼少期に学んでいた書道の記憶を想起し、絵画における時間の表現に対して関心を強めていった。会場で展示される〈点より〉と〈線より〉のシリーズは、色彩の濃さが次第に淡くなってゆくさまが表されており、行為の痕跡によって時間の経過が示されている。
1980年代に手がけられた〈風より〉や〈風と共に〉などのシリーズは、荒々しく混沌とした画面に特徴付けられる。しかし、80年代の終わり頃からは画面に空白が目立つようになり、2000年代には「照応」や「対話」のシリーズに見るように、描く行為は極度に抑制され、ごくわずかなストロークによる筆跡と、何も描かれていない空白の反応が試みられるようになる。時間の経過に着目した〈点より〉や〈線より〉とは対照的に、これらはいわば空間的な絵画だといえる。
展覧会「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」
会期:2022年8月10日(水)~11月7日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E
住所:東京都港区六本木7-22-2
開館時間:10:00~18:00(会期中の金・土曜日は20:00まで)
※入場はいずれも閉館の30分前まで
休館日:火曜日
観覧料:一般 1,700円、大学生 1,200円、高校生 800円、中学生以下 無料
※障害者手帳の持参者(付添者1名含む)は入場無料
※チケット情報は後日、展覧会ホームページなどにて告知
■巡回情報
・兵庫県立美術館
会期:2022年12月13日(火)~2023年2月12日(日)
住所:兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1(HAT神戸内)
※各会場によって一部展示作品は異なる
【問い合わせ先】
TEL:050-5541-8600 (ハローダイヤル)