展覧会「津田青楓 図案と、時代と、」が、渋谷区立松濤美術館にて、2022年6月18日(土)から8月14日(日)まで開催される。

職人の仕事から芸術家の作品へ

「図案」は工芸品の下絵として捉えられやすいが、明治期から大正期にかけて、「図案」は必ずしも何らかの応用を目的に描かれていたわけではなく、また「絵画」とも異なるものとして存在するようになった。ヨーロッパの美術やデザインが日本でも広く知られるようになった明治時代、従来の伝統的な図案から脱却し、その独創性が求められるようになると、職人の仕事と捉えられてきた図案制作に画家も携わるようになり、図案の芸術化が試みられるようになったのだ。

展覧会「津田青楓 図案と、時代と、」では、日本画、洋画、工芸、書などの幅広い分野で活躍した津田青楓(つだ せいふう)を中心に、図案集と図案にまつわる作品を展示。青楓は、明治30年代には京都で図案集を数多く出版し、大正期には夏目漱石らの本の装幀も手がけている。全3章から構成される本展では、従来のかたちにとらわれない、職人の仕事から芸術家の作品へと昇華された「図案」の世界を紹介する。

青楓が手がけた図案が一堂に

第1章では、青楓が明治期から大正期にかけて手がけた図案の仕事を、日本画や洋画の作品とともに展示。『青もみぢ』や『うづら衣』、『染織図案』など、明治30年代に刊行された図案集、鈴木三重吉『櫛』や夏目漱石『明暗』といった大正時代に携わった本の装蹄、そして刺繍など、青楓による多彩な図案作品を一堂に紹介する。

京都図案と青楓の制作背景

京都は長らく工芸の生産の消費の中心地であったが、幕末の開国と明治維新、東京遷都によって、京都の工芸界は大きな打撃を受ける。そこから立ち直るべく、産業や工芸の近代化が試みられた。京友禅の呉服店「千總(ちそう)」の主人・西村總左衛門は、写実的に富んだ絵画的表現を可能にする「ビロード友禅」を開発し、岸竹堂や今尾景年といった日本画家による下絵が好評を博したことから、画家が図案制作に積極的に携わるようになっていった。

第2章では、こうした京都図案に着目。千總に残る岸竹堂や今尾景年らの下絵を元にした友禅裂、青楓の日本画の師である谷口香嶠(たにぐち こうきょう)や、琳派の影響の下で多彩なデザインを手がけた神坂雪佳(かみさか せっか)の図案、浅井忠の図案、そしてアール・ヌーヴォーの影響などを紹介し、青楓の図案制作の背景に光をあてる。

「小芸術」の世界

1907年(明治40)、青楓はパリに留学し、アカデミスムの画家ジャン＝ポール・ローランスに師事している。3年後に帰国すると、洋画を描くかたわらで新しい表現にも取り組むようになった。当時、官設の大展覧会向けの絵画ではなく、芸術は社会に寄り添うべきであるとの考えから、素朴な手工芸のように生活を彩る「小芸術」への関心が高まっていた。第3章では、青楓のほか、富本憲吉や藤井達吉らによるこうした試みを紹介する。

展覧会概要

展覧会「津田青楓 図案と、時代と、」
会期：2022年6月18日(土)〜8月14日(日) 会期中に一部展示替えあり
［前期 6月18日(土)〜7月18日(月・祝) / 後期 7月20日(水)〜8月14日(日)］
会場：渋谷区立松濤美術館
住所：東京都渋谷区松濤2-14-14
開館時間：10:00〜18:00(入館は17:30まで)
休館日：月曜日(7月18日(月・祝)は開館)、7月19日(火)、8月12日(金)
観覧料：一般 800円(640円)、大学生 640円(510円)、高校生・60歳以上 400円(320円)、 小中学生 100円(80円)
※土日祝日および最終週は日時指定予約制(詳細は美術館ホームページにて告知)
※( )内は渋谷区民の入館料
※土・日曜日、祝休日および夏休み期間は、小中学生無料
※毎週金曜日は渋谷区民無料
※障がい者および付添者1名は無料
※リピーター割引：観覧日翌日以降の本展期間中、有料の入館券の半券と引き換えに、通常料金から2割引きで入館可
※会期、時間、イベント、入館方法などは変更となる可能性あり(最新情報は美術館ホームページなどにて確認のこと)

【問い合わせ先】
渋谷区立松濤美術館
TEL：03-3465-9421