たとえば、アレキサンダー・マックイーン(McQueen)のドレスは、爬虫類の表皮をプリントで再現しつつ、曲線的な衣服の造形ゆえ、その柄は鮮やかな蝶の姿をも彷彿とさせる。あるいは、ノワール ケイ ニノミヤのドレスは、樹脂で形成した細かな突起が、あたかも植物の腺毛を思わせる。
あるいは、真っ赤な唇と一体化するような、ジョナサン・アンダーソンのロエベによるドレスや、さながら贈り物のようにラッフルで構成した、トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)のジャンプスーツなど、そこには装うことへの情熱がそのままに体現されているかのようだ。
人間は、姿を変えることを夢見て、装いを着替えてやまない。そうした在り様を、現代アーティスト・AKI INOMATAの作品に登場するヤドカリと比べてもいいのかもしれない。INOMATAの代表作《やどかりに「やど」をわたしてみる》は、世界各地の都市を透明な樹脂でかたどった「やど」を、ヤドカリに渡して住んでもらうもの。都市をかたどった「やど」は、いわば人間が取り決めた制度を体現している。ところがヤドカリは、そういった制度に構うことなく、軽々と「やど」を変えてゆく。社会的な制度にとらわれず「着替える」ヤドカリに、自在に「装う」ことでアイデンティティを組み替えてゆく可能性を仮託してもいいのかもしれない。
展覧会「LOVE ファッション—私を着がえるとき」
会期:2025年4月16日(水)〜6月22日(日)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー ギャラリー1・2
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
開館時間:11:00〜19:00(入場は18:30まで)
休館日:月曜日(4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開館)、5月7日(水)
観覧料:一般 1,600円(1,400円)、高校・大学生 1,000円(800円)、中学生以下 無料
※( )内は各種割引料金
※同時開催「愛について 収蔵品展083 寺田コレクションより」および「project N 98 楊博」も観覧可
※障害者手帳の所持者および付添者1名は無料
■主な出展アーティスト
・ファッション(括弧内はデザイナー)
アレキサンダー・マックイーン(アレクサンダー・マックイーン)、バレンシアガ(クリストバル・バレンシアガ、デムナ・ヴァザリア)、バルマン(ピエール・バルマン)、ボッテガ・ヴェネタ(ダニエル・リー)、カステルバジャック(ジャン=シャルル・ド・カステルバジャック)、セリーヌ(フィービー・ファイロ)、シャネル(カール・ラガーフェルド)、ディオール(クリスチャン・ディオール、ジョン・ガリアーノ)、コム デ ギャルソン(川久保玲)、コム デ ギャルソン・オム プリュス(川久保玲)、ゴルチエ パリ バイ サカイ(ジャン=ポール・ゴルチエ、阿部千登勢)、ジバンシィ(アレクサンダー・マックイーン)、ヘルムート ラング(ヘルムート・ラング)、ジル サンダー(ラフ・シモンズ)、ジュンヤ ワタナベ(渡辺淳弥)、キムヘキム(キミンテ・キムヘキム)、ロエベ(ジョナサン・アンダーソン)、マメ クロゴウチ(黒河内真衣子)、メゾン マルジェラ(ジョン・ガリアーノ)、ミュグレー(ティエリー・ミュグレー)、ネンシ・ドジョカ(ネンシ・ドジョカ)、ノワール ケイ ニノミヤ(二宮啓)、舘鼻則孝、プラダ(ミウッチャ・プラダ)、リュウノスケオカザキ(岡﨑龍之祐)、ソマルタ(廣川玉枝)、ステラ マッカートニー(ステラ・マッカートニー)、トモ コイズミ(小泉智貴)、ヴィクター&ロルフ(ヴィクター・ホスティン、ロルフ・スノラン)、ヴィオネ(マドレーヌ・ヴィオネ)、ヨウジヤマモト(山本耀司)、ヨシオクボ(久保嘉男)、ウォルト(ジャン=フィリップ・ウォルト) ほか
・アート
AKI INOMATA、ヴォルフガング・ティルマンス、小谷元彦、笠原恵実子、澤田知子、シルヴィ・フルーリー、原田裕規、松川朋奈、横山奈美
【問い合わせ先】
ハローダイヤル
TEL:050-5541-8600