二宮和也が、2022年8月11日(木 ・祝)公開の映画『TANG タング』で主演を務める。
映画『TANG タング』は、ベルリン国際映画祭で「映画化したい一冊」に選ばれ、劇団四季のミュージカルとして舞台化もされているイギリスのベストセラー小説「ロボット・イン・ザ・ガーデン」を実写映画化するもの。妻に捨てられたダメ男と、記憶をなくした不良品ロボットという“ポンコツだけど最強!?”なコンビが<人生の宝物>を探す旅に出る、感動の冒険エンタメだ。
「嵐」の活動休止以降、初の主演映画となる本作を二宮和也はどのように捉えているのだろうか? インタビューでは、“ダメ男”の主人公を演じるにあたっての役作りから、ロボットとの撮影秘話、自身が考える「夢を叶える秘訣」まで、たっぷりと話を伺うことができた。
・映画『TANG タング』は、二宮さんにとって「嵐」の活動休止以降初の主演映画となります。どのような経緯で出演が決まったのでしょうか?
実は、2020年には既に『TANG タング』のお話を頂いていました。でも、僕自身は2020年の1年は全部「嵐」のために思い出で終わろうと思っていたので、個人で働くのは全てお断りしていたんです。
ですが、ありがたいことに、監督から「2020年をそうお過ごしになられるのなら僕は待ちます!気にせずに走り切ってください。」とのお話をいただいて。そのお言葉に甘えて、その後は自然と現場に連れて行ってもらった感じでした。
・二宮さん演じる主人公・健は、妻に捨てられ、自分の夢も諦めているニート。劇中ではその“ダメ男っぷり”が印象的でしたが、二宮さんと重なる部分はありましたか?
性格的に、僕と健は完全に真逆です。健を見て、「しょうがない男だな~」くらいに思う人もいると思うのですが、僕はいかに合理的に動けるかずっと考えている人間なので、健みたいにダラダラしている人間を見ると信じられないくらいイライラします。(笑)
・健と二宮さんは対照的なキャラクターだったのですね。では、どのようにして役作りを…?
健のだらしない部分だったり、ウジウジした部分を見て、自分もそうだなって共感する人も多いと思うんです。だから、誰しも持ちうる“弱み”や“嫌な部分”というのを可視化して、観てくださる方々の共感を得ることを意識しました。極論を言うと、みんなが嫌だなと思うこと、単純に僕がイライラすることを選択し続けると、健は成り立つという…。(笑)
・ご自身と真逆の役柄を演じるというのは、やはり大変でしたか?
そんなこともないです。僕の場合、自分の性格やキャラクターに近い役柄の方がやりづらく感じます。お金のない人がお金持ちの役をやる方がなんとなく民意が取れるように、自分と逆のキャラクターを演じる方が、ちゃんとみんなが想像しているところにたどり着ける気がします。
・現実世界に生きづらさを感じている“人生迷子中”の健のように、二宮さん自身も“人生迷子”になった経験はあるのでしょうか?
いいえ。これまで、人生に悩んだり迷ったりすることは本当になかったと思います。「嵐」が休みに入るまではいつもグループの総意で動いていたので、仮に誰かが悩んでいたり迷っていたりしても、全体が結論を出したのであればもうその方向へと進んでいたんです。
これまで色んな方々に、色んな高みに連れて行ってもらったからこそ、1人で生きていけないということは身に染みて感じていました。だから、1人で悩んだり迷ったりすることはありませんでしたし、グループで進んでいく環境の中で仕事ができて本当に感謝でいっぱいでしたね。
・健の相棒役のロボット、タングの可愛らしさも本作の見所ですよね。もし二宮さんがタングのようなロボットを見つけたとしたらどうしますか?
…売ります。(笑) 自分の仕事が特殊なのでなんとも言い難いですが、今の時代プライバシーって本当に大事でしょ。目玉が付いて喋るロボットに、情報をずっと垂れ流されるのって怖いじゃないですか。人の携帯を道で拾った時に、「やった~!」とはならないし、なんなら触るのやめておこうぐらいに思いますよね。リアリティを持って真面目に考えたら、皆さんも最終的に売るとは思いますよ!それだと物語は進まないですけど。
・(笑)。実際タングとのシーンは全てCGで撮影したそうですが、“相手がいない”中での演技は難しかったですか?
正直、僕は楽でした。僕が右を向けば右に、前を向けば前にタングがいることになるので、自分の思い通りに演技できる。どちらかというとゲームをしている感覚に近くて、本当に自由にやらせていただきました。
1番大変だったのは、編集作業の方だったと思います。僕があちらこちら色んな所を見るせいで、納期を遅らせた可能性は大いにあります。(笑)
・ロボット相手の演技でもやりづらくなかったというのは意外です!
それだけ、CG技術のレベルが上がってきているということだと思います。それと同時に、生身の人間と演技することの大変さも改めて感じました。ロボット系の怖い話で“結局、人間が1番怖い”というオチになるのと通ずるように、僕ら役者も人間相手が一番難しい。あっちにも感情があって、こっちにも感情があって、それをお稽古するときにどれだけぶつけていいのか、どれだけ受け止めてあげればいいのかっていうのを常に考えなければいけないので。
1人でお芝居をしている時ももちろん色んなことを考えてはいましたが、京本君(京本大我)に会ったり、奈緒ちゃん(奈緒)に会ったりするシーンがあるとやっぱり嬉しかったし、人と喋るのが楽しいなと思いました。今日は人間のいる日だ!っていう。
・映画やドラマ、YouTubeなど様々なフィールドで活躍されている二宮さんですが、現在の仕事に対するモチベーションはどこから?
芸能界ならではの話で言うと、お芝居やテレビ番組が決まることは、もちろんモチベーションに繋がります。毎日規則的に仕事がある方とは違って、僕なんかは新しい仕事が「ドン!」って急に決まるので、驚きの気持ちと頑張ろうという気持ちが勝手に湧き上がってくるんです。
でも1番は、作品を見てくれた人が満足して、どこかで感想を言ってくれること。僕は、作品を一人でも多く見てほしい、というより、“見た人全員が満足してほしい”、という気持ちで仕事をしている人間なので…。反響を感じられるこの職業に助けられています。
・では、作品の反響やコメントは自分から見に行くことも多いのですか?
はい。自分が作ったものに関しては見ます。YouTubeのコメント欄なんかはほとんど見てるんじゃないかな。そこで飛び交っている情報を見て、企画を考えることもあります。
たとえば、占いをしたいと動画で言った時に、「King & Princeの岸君がタロットできますよ!」というコメントが数多く寄せられていたんです。実際に岸に占ってもらったところ、「夏の終わりにすごいことが待っていますよ。」なんて言われて。内心、「馬鹿だなこいつ~」と思っていたんです。(笑) ですが実際、夏の終わりに24時間テレビが決まって、その後また動画が伸びていたりして。視聴者さんのコメントがきっかけで生まれたこの一連の流れが、僕にとっては面白かったです。
・では、映画やドラマに関してはどうでしょう?
YouTubeとは違って、映画やドラマ、バラエティなどの感想はそこまで反応を気にしていないかもしれません。というのも、責任者が責任をもって仕上げた作品の中では、僕は現場の駒の1つに過ぎないからです。完成した作品は、もう違う人のものだよ、あとは眺めるだけのものだよ、そんな風に思っています。例えるなら、大工さんのような気持ちというか。
・具体的にいいますと…?
大工さんが、住んでいる人に、「この家僕が作ったんですけど、ちょっと中見てもいいですか。」なんて言わないのと同じで、作ったら僕の役目はそれまでという意味です。映画やテレビ番組を見て楽しんでくれる人がいたらいいなとは思いつつ、出来上がった作品は自分の手を離れたものとして捉えていますね。