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現代彫刻家・戸谷成雄の個展が長野県立美術館で -「表面・構造」や「言語」などに着目、初期〜近作を紹介

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企画展「戸谷成雄 彫刻 ─ある全体として」が、長野県立美術館にて、2022年11月4日(金)から2023年1月29日(日)まで開催される。その後、2023年2月25日(土)から5月14日(日)まで、埼玉県立近代美術館に巡回する。

戸谷成雄、長野で初の個展

戸谷成雄《POMPEII‥79》〈Part1〉1974/1987年
15×60×60cm、45×45×170cm(4pcs) コンクリート(板) 作家蔵
撮影:戸谷成雄
戸谷成雄《POMPEII‥79》〈Part1〉1974/1987年
15×60×60cm、45×45×170cm(4pcs) コンクリート(板) 作家蔵
撮影:戸谷成雄

戸谷成雄(とや しげお)は、日本を代表する現代彫刻家だ。1947年長野に生まれた戸谷は、1974年の初個展における《POMPEII・・79》など、彫刻概念の再解釈を試みたコンセプチュアルな作品を発表、その後はチェンソーで木材の表面を刻んだ木彫作品のシリーズ「森」などを展開した。1970年代当時、旧来の絵画や彫刻が事実上否定され、美術そのもののあり方が問われるなか、戸谷は制度として解体された「彫刻」の概念を再構築し、その新たな可能性を探ってきたのだった。

戸谷成雄《双影体II》2001年
73×84×850cm 木、灰、アクリル 愛知県美術館蔵
撮影:武藤滋生 Courtesy of ShugoArts (ライスギャラリーby G2展示風景)
戸谷成雄《双影体II》2001年
73×84×850cm 木、灰、アクリル 愛知県美術館蔵
撮影:武藤滋生 Courtesy of ShugoArts (ライスギャラリーby G2展示風景)

企画展「戸谷成雄 彫刻 ─ある全体として」は、出身地・長野で初となる戸谷成雄の個展。初期から近作まで、代表作を含む約30点の作品を、年代順ではなく幾つかのコンセプトのもとで展示する。とりわけ、戸谷独自の彫刻概念である「表面」や「構造」に、日本語の言語構造への深い思索が反映されている点に光をあてる。

「視線」と「表面・構造」の交錯

戸谷成雄《雷神─09》2009年
932×170×155cm 木、灰、アクリル、ガラス 作家蔵
撮影:山本糾(ヴァンジ彫刻庭園美術館「戸谷成雄 洞穴の記憶」展示風景)
戸谷成雄《雷神─09》2009年
932×170×155cm 木、灰、アクリル、ガラス 作家蔵
撮影:山本糾(ヴァンジ彫刻庭園美術館「戸谷成雄 洞穴の記憶」展示風景)

戸谷作品の根源的なテーマを体感させるのが、エントランスの吹き抜け空間に展示される《雷神─09》だ。樹木が雷に打たれた姿に着想を得た同作は、表面に無数に傷が刻まれており、「視線」によって掘り出されたものが彫刻になるという考えに基づいて制作されている。《雷神─09》は、その圧倒的なスケールでもって、「視線」と「表面・構造」の関係性を示しているものだといえる。

「死」の世界

戸谷成雄《森IX》2008年
220×30×30cm(30pcs) 木、灰、アクリル ベルナール・ビュフェ美術館蔵
撮影:山本糾(ヴァンジ彫刻庭園美術館「戸谷成雄 洞穴の記憶」展示風景)
戸谷成雄《森IX》2008年
220×30×30cm(30pcs) 木、灰、アクリル ベルナール・ビュフェ美術館蔵
撮影:山本糾(ヴァンジ彫刻庭園美術館「戸谷成雄 洞穴の記憶」展示風景)

3つの展示室のうち、第1展示室では、戸谷の作品における「死」の世界に着目。「死」とは、他者が存在しないかぎり実感することができず、そのため自己と他者の関係に目を向ける契機のひとつとなる。そして、他者と世界を共有するということが、言語の問題へと接続される。会場では、「死」の世界をほのめかす《森IX》や《《境界》からIII》、《地霊III-a》などを展示。展示室の1階では作品のあいだを歩き回りながら、2階からは展示室全体を俯瞰して鑑賞することができる。

戸谷作品における「彫刻の起源」

戸谷成雄《射影体》2004年
197x310x67cm 木、灰、アクリル 作家蔵
Copyright the artist Courtesy of ShugoArts
戸谷成雄《射影体》2004年
197x310x67cm 木、灰、アクリル 作家蔵
Copyright the artist Courtesy of ShugoArts

第2展示室では、戸谷作品に通底する「彫刻の起源」の模索を、初期作品を中心に紹介。たとえば、戸谷作品の起点となる《POMPEII・・79》は、古代都市・ポンペイに着想した作品だ。その遺跡では、火山灰で埋没した人間の身体が空洞で残るというように、空間と実体がいわば反転している。そこから同作は、対概念の中間として「表面」の概念を表すとともに、他者と個の関係を問いかけるものとなっている。また、《射影体》などから、人体の表現と「彫刻の起源」、そして「表面」の関係についても紹介する。

「表面・構造」と「言語」

戸谷成雄《森の象の窯の死》1989年
230×560×62cm 木、灰、アクリル 東京都現代美術館蔵
撮影:山本糾
戸谷成雄《森の象の窯の死》1989年
230×560×62cm 木、灰、アクリル 東京都現代美術館蔵
撮影:山本糾

第3展示室では、戸谷が手がけたモニュメンタルな作品を中心に取り上げつつ、「表面・構造」と「言語」の関係を紹介。その一例《森の象の窯の死》においては、作品タイトルで助詞「の」が繰り返され、タイトルの意味が言語のうえで一意的に限定できない空間が開けてくることになる。さらに、鏡像関係にある2つの直方体の「間」に空間の余韻を湛える《双影体II》なども展示し、戸谷作品に通底する思索に光をあててゆく。

展覧会概要

企画展「戸谷成雄 彫刻 ─ある全体として」
会期:2022年11月4日(金)〜2023年1月29日(日)
会場:長野県立美術館 展示室1・2・3
住所:長野県長野市箱清水1-4-4
開館時間:9:00〜17:00(展示室入場は16:30まで)
休館日:水曜日(11月23日(水・祝)は開館)、11月24日(木)、年末年始(12月28日(水)〜1月4日(水))
観覧料:一般 1,000円(900円)、大学生・75歳以上 700円(600円)、高校生以下・18歳未満 無料
※( )内は20名以上の団体料金
※東山魁夷館およびNAMコレクション展との共通料金:一般 1,500円、大学生・75歳以上 1,000円
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所持者および付添者1名は無料

■巡回情報
埼玉県立近代美術館
会期:2023年2月25日(土)〜5月14日(日)
住所:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1

【問い合わせ先】
TEL:050-5542-8600 (ハローダイヤル)

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