展覧会「生誕100年 大辻清司 眼差しのその先 フォトアーカイブの新たな視座」が、東京の武蔵野美術大学 美術館・図書館にて、2023年9月4日(月)から10月1日(日)まで開催される。
大辻清司(おおつじ きよじ)は、1923年東京に生まれ、20世紀末に至るまで約半世紀にわたって制作と思索を続けた写真家だ。戦後日本の前衛芸術グループ「実験工房」や「グラフィック集団」のメンバーとして活動するばかりでなく、美術、音楽、演劇、ダンス、建築といった同時代芸術に立ち会い、貴重なドキュメントを撮影するなど、幅広い仕事を手がけたことで知られている。
武蔵野美術大学 美術館・図書館は、大辻が撮影したプリントや撮影フィルムのほか、蔵書、制作メモなどから構成される「大辻清司フォトアーカイブ」を擁している。これらの作品や資料は、大辻が何を見つめ、どのように対象に迫ったのかを示唆するものだ。とりわけ、フィルムに記録された一連の撮影コマからは、作品の背景にある試行の痕跡や、被写体との間に生まれる機微を窺い知ることができる。
展覧会「生誕100年 大辻清司 眼差しのその先 フォトアーカイブの新たな視座」は、こうしたアーカイブ資料の検証によって得られた視点を軸に、「原点」「シアター」「シークエンス」「他者たち」の全4章構成で、大辻の表現者としての輪郭をたどってゆくもの。作品として制作されたオリジナルプリントとともに、フィルムに残された未発表作品にも光をあててゆく。
たとえば「原点」の章では、大辻の初期の探究に着目。実験工房を主催した瀧口修造との出会いのもとに発表された「太陽の知らなかった時」全10点を、オリジナルプリントとフィルム原板からの高精細印刷によって紹介するほか、物体とその肌理を捉えた《氷紋》や《黒板塀》などを展示する。
一方、さまざまな存在が通過し、交叉する流れを捉える「シークエンス」は、1960年代末頃からの大辻の制作を特徴付けるキーワードのひとつだ。たとえば、1970年、もの派やアルテ・ポーヴェラ、コンセプチュアリズムといった当時最新の美術潮流を紹介した「人間と物質」展において、大辻は作品設営日から会場を歩きまわり、その状況をスナップショットの連続によって捉えている。本展ではそのなかから、マリオ・メルツや松澤宥など4人による展示空間を撮影した作品を紹介する。あわせて、身近な街の路上に目を向け、道ゆく人びととその流れを捉えた《界隈》や《道》も目にすることができる。
展覧会「生誕100年 大辻清司 眼差しのその先 フォトアーカイブの新たな視座」
会期:2023年9月4日(月)〜10月1日(日)
会場:武蔵野美術大学 美術館 展示室3・4・5
住所:東京都小平市小川町1-736
開館時間:11:00〜19:00(土曜日・日曜日・祝日は10:00〜17:00)
休館日:水曜日
入館料:無料
【問い合わせ先】
武蔵野美術大学 美術館・図書館
TEL:042-342-6003