昭和36年(1961年)、覚悟を決めて再び奄美に戻った一村は、作品制作に向けた生活を開始。紬工場で染色工として働いて制作費を蓄え、借家に移って切り詰めた暮らしを送った。そして昭和42年、5年間勤めた工場を辞めて、3年にわたって制作に没頭。《アダンの海辺》をはじめとする代表作が手がけられたのは、この時期であるとされる。
一村が自ら書簡に「閻魔大王えの土産品」だと記した「大作二枚」が、縦長の画面からなる《アダンの海辺》と《不喰芋と蘇鐵》だ。《アダンの海辺》では、静かに波の寄せる海辺を背景に、アダンの樹が不思議な生命感を放っている。一方、《不喰芋と蘇鐵》では、亜熱帯の植物が、力強い色彩でもって濃密な画面を構成している。本展は、これら2点の大作が揃って公開される、14年ぶりの機会となる。
さらに、会場では、一村が69歳でこの世を去るまで、奄美で手がけた作品の数々を公開。花鳥や風土を描いた絵画のほか、余白を残さずに海の生き物や植物で仕上げた《海老と熱帯魚》、対象に肉薄するスケッチの数々を目にすることができる。
特別展「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」
会期:2024年9月19日(木)〜12月1日(日)
会場:東京都美術館 企画展示室
住所:東京都台東区上野公園8-36
開室時間:9:30〜17:30(金曜日は20:00閉館)
※入室は閉室30分前まで
休室日:月曜日(9月23日(月・振)、10月14日(月・祝)、11月4日(月・振)は開室)、9月24日(火)、10月15日(火)、11月5日(火)
観覧料:一般 2,000円、大学生・専門学校生 1,300円、65歳以上 1,500円、高校生以下 無料
※土・日曜日、祝日、11月26日(火)以降は日時指定予約制(当日に空きがあれば入場可)
※身体障害者手帳、愛の手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、被爆者健康手帳の所持者および付添者(1名まで)は無料
※高校生以下、各種手帳の所持者および付添者(1名まで)は、日時指定予約不要
※高校生・大学生・専門学校生、65歳以上、各種手帳の所持者は、いずれも証明できるものを要提示
※毎月第3土曜日・翌日曜日は「家族ふれあいの日」により、18歳未満の子どもを同伴する保護者(都内在住、2名まで)は一般通常料金の半額(住所のわかるものを要提示。日時指定予約不要。販売は美術館チケットカウンターのみ)
【問い合わせ先】
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル / 受付時間 9:00〜20:00)