八木「今回展示されているドレスはプリントドレスと呼ばれていて、Tシャツのように気軽に着られるようにと毎シーズン新しい柄をプリントとして残すために出していたものです。なので形は10年間変わらず、柄だけを変えて展開していて、それを10年分一気に見られるのは、なかなかないし、各シーズンのテーマの違いなどが分かりやすいんじゃないかと思います」
勝井「ドレスの展示方法も面白かったですよね。仮想の壁という設定で。」
八木「あの服をモデルさんにきせて見せたことはあるのですが、今回の展示のように平面的に見せたことで、平面的に引いたパターンの特徴がより一層出ているのではないかなと思います。我々が今回出展したのは今現在の作品ばかりであって、これが10年後どういう文脈の中に自分たちが置かれるのかというのは興味深いなと思います。そういう長いスパンの切り口で発表されている展覧会だと思うのでまた10年後同じような企画で見られたら面白いなと思います」
今回、3作品出展されているうちのひとつは「シルエット」という作品で、シルエットから予想されるアイテムと実際のアイテムの違いから洋服の見え方について問う作品になっています。移りゆくファッションをセクションごとに見られたのが良かったです。自分が見たことのないコレクションを生で見られるのもいい体験でした。
私が学生時代、大きなファッションの展覧会があって、私はそれを見て刺激を受けてファッション界に入ったんです。今は自分がこちら側(展示される側)に立つことになって夢が叶いました。今度は自分が自分の後にくるデザイナーに何か伝えられたらいいなと思います。
「日本のデザイナーだけの展覧会ということで、“今の時代を見せる”という機会に選ばれたことは光栄に思います。」
ロンドンの展示も見たのですが、まとふの作品はそこでは基本的には、特に”東京の今のデザイナー”と今回ほど明確な形では展示されていなかったので、今回の展示は、ひとつのまとまりとしてより完成されたのになっているんじゃないかなと思います。
今回の展示では、以前ELTTOB TEP ISSEY MIYAKEで開催した展示と同じく、(サバイバルウェアである作品の)ポケットに(新聞ではなく)花が詰められて、ラブ&ピースに変わっていましたね。ハッピーなメッセージが込められています。
洋服とは、すごく変わったものあっても、それが身体性の新しい可能性とか生き方の提案とかになっていればファッションだと思います。だから、提案性の問題ですね。自分は若い頃、イッセイさんの服を見て感動したわけです。だから感動がないといけないんです。
本展に参加させていただいて非常に感謝しています。今経済的にも国内のファッションビジネスってすごく停滞ぎ みですので、今後日本ファッションの文化性をもっとアピールしていただいて、ファションの持っている経済効果というか文化性を経済の促進剤にできるような 発表をしてもらえると嬉しいです。
玉井健太郎(アシードンクラウド)
自分が憧れていた人とか自分が興味をもったきっかけをつくってくれた人と同じ壇上で展示させていただくことを、とても光栄だと思います。その上で、これからもっとがんばっていかないといけないな、自分たちも次の人へメッセージを伝えていかないといけないな、と思いました。
川 久保さん、ヨウジさん、イッセイさんは紙面上などでリアルタイムで見てきました。ビューティ・ビーストとか20471120とか、高校生のときにお金を貯 めて買っていたブランドなので、洋服を着ることで何か自分が変われるというきっかけをいただいたデザイナーさんでもあります。
自分の服を着てもらって、ちょっと生活が豊かになるようなきっかけを作れれば嬉しいなと思います。そういう立場で今ものをつくっています。そうやって、自分なりにやっていった結果、それが文化になっていくのだと思います。
今回の展示作品に選ばれてびっくりしました。作品がどんな風に展示されているのか、これから見に行くので楽しみです。まだ2シーズン目ですが、これからこのスタイルからいくらか変遷をへて進化させていきたいと思っています。
今回の展覧会は、(ロンドン・ミュンヘンでの展示に比べて)現代の作家のセクションを入れたことですごくアップデートされている気がします。川久保さんとかヨウジさんとかの服がとてつもなくかっこいいんです。会場の展示構成をしながらも、一観客として感動していました。展示デザインは、なるべくファッションをひきたてるように作ってきましたが、今回は東京での開催ということで気合が入りました。ロンドンの展示では、海外の人に見せるということで、一個のテーマに絞って日本の世界観を伝えましたが、今回は日本の客がメインなので、もっと深く理解できると思い、しっかりセクションに合わせてつくっていった感じです。観る人それぞれの楽しみ方ができる展示になっていると思います。服を美術館で観るというのは、不思議な体験でもあるとおもうので、今すぐにでも着れそうな服が展示されているというギャップも楽しんでもらえればと思います。
【展覧会概要】
「Future Beauty 日本ファッションの未来性」
期間 : 2012年7月28日(土)~10月8日(月・祝)
会場 : 東京都現代美術館 企画展示室3階
住所 : 東京都江東区三好4-1-1
休館日 : 月曜日(ただし9/17、10/1、8は開館、9/18は休館)
開館時間 : 10:00~18:00(入場は17:30まで)
URL:http://www.mot-art-museum.jp
■講演会:「ファッション・ショーの舞台裏:ヘアメイクの視点から」
日時:2012年8月5日(日) 午後1時~3時
会場:東京都現代美術館 講堂(地下2階)
住所:講演者:岡元美也子、計良宏文(資生堂ビューティートップスペシャリスト)
参加費:無料
申込方法:先着200名 ※申し込み不要
■講演会:「建築家・藤本壮介、『Future Beauty』展を語る」
日時:2012年8月8日(水)午後7時~8時30分
会場:日本経済新聞社 東京本社2階 SPACE NIO
住所:東京都千代田区大手町1-3-7
講演者:藤本壮介(本展展示デザイン担当)
参加費:1,000円
申込方法:事前申込制。定員(80名)に達し次第締め切り。
京都服飾文化研究財団 事務局 TEL:075-321-9221 にて受付。
※受付時間:平日9:00~17:00
【出展デザイナー】
三宅一生、川久保玲(コム デ ギャルソン)、山本耀司、阿部千登勢(サカイ)、新居幸治+新居洋子(エタブルオブメニーオーダーズ)、荒川眞一郎、太田雅貴(オオタ)、小野塚秋良(ズッカ)、大矢寛朗(OH! YA?)、勝井北斗+八木奈央(ミントデザインズ)、小島悠(システレ)、栗原たお(タオ コム デ ギャルソン)、高田賢三(ケンゾー)、高橋盾(アンダーカバー)、滝沢直己(イッセイ ミヤケ)、立野浩二(コージ タツノ)、玉井健太郎(アシードンクラウド)、津村耕佑(ファイナルホーム)、中章(アキラナカ)、長見佳佑(ハトラ)、廣川玉枝(ソマルタ)、堀内太郎(タロウ ホリウチ)、堀畑裕之+関口真希子(まとふ)、皆川明(ミナ ペルホネン)、森永邦彦(アンリアレイジ)、渡辺淳弥(ジュンヤ ワタナベ)、20471120、牧野勝弘(アスキカタスキ)、神田恵介(ケイスケ カンダ)、高島一精(ネ・ネット)、山下隆生(ビューティ・ビースト)、坂部三樹郎+シュエ・ジェンファン(ミキオサカベ)、山縣良和(リトゥンアフターワーズ)、山本哲也(ポト)、黒河内真衣子(マメ)、森英恵 他